傍若無人の北朝鮮・金正恩氏

宮塚コリア研究所代表 宮塚 利雄

傲慢な発言を繰り返す
ミサイル発射実験もやめず

宮塚 利雄

宮塚コリア研究所代表 宮塚 利雄

 日本にも甚大な被害をもたらした台風13号は朝鮮半島の中央部を直撃し横断した。韓国も甚大な被害が出たことを伝えているが、北朝鮮の中央通信などは9月7日から8日未明にかけて上陸した台風の被害は「5人死亡、住宅や公共の建物の崩壊または浸水状況、農耕地約4万6000㌶が浸水被害を受けた」と報じた。台風の威力からすれば被害状況は少ないように思えるが、問題は浸水した農耕地である。台風は北朝鮮の穀倉地帯である黄海南・北道と江原道付近を直撃しており、秋の収穫と今年の北朝鮮の食糧問題に与える規模は甚大になるはずだ。

 日本の某新聞は「北朝鮮が自然災害を報じるのは珍しい」というようなことを報じていたが、北朝鮮はこれまで台風などの被害で農作物に被害が出て、国際社会から食糧援助を求めるときには針小棒大に被害規模を報じ、場合によっては合成写真を駆使してまでも被害状況の大きさを立証してきた。それだけに、先の報道は台風被害の全容を確認していない段階での記事であるとしても、被害規模が少ないのではないか(決して被害規模が甚大なることを願っているのではない)。

親北・反日の韓国大統領

 さて、金正恩朝鮮労働党委員長は8月の最高人民会議で「北朝鮮の最高権力者」であることを北朝鮮人民に改めて知らしめ、4回目となる米朝首脳会談の実現に向けて国際社会に「お前ごときが何様だ」と思われんばかりの発言を繰り返している。4月1日に北朝鮮の崔善姫第1外務次官は3回目の米朝首脳会談の開催に当たり、ボルトン米大統領補佐官(当時)が「北朝鮮が核を放棄するという戦略的決定をしたことを示す真の兆候が必要だ」と述べたことに対し「横柄な発言だ」と批判し、「今後もこのような分別のない発言するなら良いことはないだろう」と警告した。

 そして、北朝鮮外務省の金明吉前駐ベトナム大使が9月20日に発表した談話で、「面倒な厄介者が消えた」と、トランプ米大統領がボルトン氏を大統領補佐官から解任したことを評価した、と朝鮮中央通信は伝えた。北朝鮮は米朝協議前に「われわれの制度の安全を不安にし、発展を妨げる脅威と障害物」が完全に除去されてこそ、非核化論議ができるとし、「体制保証と制裁解除」を注文するありさまである。

 またトランプ大統領は北朝鮮が7月から8月にかけて相次いで行ったミサイル発射実験についても「たかが短距離ミサイルの発射ではないか(わが国に届くようなものではない)、正恩氏は私に対して非常に率直に話している、われわれは非常に良い関係にある」と強調するありさまである。

 さて、「米朝首脳会談実現の橋渡し役」を自任する韓国の文在寅大統領は、「金正恩の報道官」と揶揄(やゆ)されるほどの親北・反日の方で、国内政策の失敗は親北朝鮮政策(反日・親中国政策)で乗り越えるつもりでいる。韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSОМIA)破棄を決定した翌日に、北朝鮮はこれらを歓迎するのか、あざけるかのようにミサイル発射実験を実行した。

 トランプ氏いわく「俺は自国に届かないミサイル発射実験など関係ない。おい、シンゾウ、お前の国を守る(はずの)武器だけは買うように」との立場だ(彼を商売人の外交音痴だという、犬の遠ぼえ的なことを言う人も多かったが、彼は国のためには北朝鮮という小国ですらも食べ残すことはなかった)。

 文在寅大統領は9月末のトランプ大統領との会談でGSОМIAへの言及はなく、米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大などの話に終始した。

拉致仲介依頼も回答なし

 一方、日本であるが、トランプ大統領からは「シンゾウ、正恩に拉致の話は伝えた」ということになっている。トランプ大統領、中国の習近平国家主席、それに韓国の“茶坊主”大統領に「拉致問題の解決のための橋渡し役」を依頼しているが、いまだにこれといった回答はない。

 そんな折、山梨県の金丸信吾氏を団長とする「日朝友好山梨県代表団」なるものが北朝鮮を訪問した。団長は「金正恩との会談もある」と吹聴したようだが、このような訪朝団に北朝鮮がまともに対応するはずがない。強面(こわもて)の宋日昊大使にすごまれて帰ってきただけの、間抜けた代表団一行であった。

(みやつか・としお)