北弾道ミサイル、国際社会は圧力を強めよ
米国防総省は、北朝鮮が9日に発射した短距離ミサイルとみられる飛翔体について「複数の弾道ミサイル」だったと断定した。岩屋毅防衛相も「短距離弾道ミサイルを発射したとみられる」と述べた。
弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会の制裁決議に違反するものであり、危険な挑発行為は許されない。
正恩氏が発射に立ち合う
弾道ミサイルは、北朝鮮北西部・平安北道の亀城周辺から東方向に2発発射され、それぞれ約420、270㌔飛行。北朝鮮の国営メディアは、金正恩朝鮮労働党委員長が発射に立ち合ったと報じた。
ミサイルは移動式発射台から発射されたとみられている。北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、2017年11月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」以来となる。
北朝鮮は今月4日にも短距離の飛翔体を発射している。2月にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談が決裂したことで挑発を繰り返しているのであれば決して容認できない。国際社会は制裁強化などで圧力を強める必要がある。
だが、トランプ米大統領は米紙のインタビューで「短距離ミサイルなので(北朝鮮が)信頼を破ったとは全く受け止めていない」と述べ、特に問題視しない考えを明らかにした。トランプ氏としては北朝鮮核問題の解決を外交成果にするため、対話路線を維持して批判を抑えたいのだろうが、これでは北朝鮮を増長させることにならないか。足元を見られてはなるまい。
また韓国にいたっては、北朝鮮の飛翔体を弾道ミサイルだと断定することさえ避け、食料支援の検討を続けている。融和姿勢は、北朝鮮の脅威を高める結果を招くだろう。
一方、安倍晋三首相はトランプ氏との電話会談で、前提条件を付けずに日朝首脳会談を模索すると表明した。正恩氏が米国、中国、ロシア、韓国の首脳と相次いで会談する中、6カ国協議の枠組みで日本だけが会談していない。首相は拉致問題進展の糸口をつかむため、会談を実施する方針に転換したものとみられている。
安倍政権は拉致問題を最重要課題と位置付けている。被害者家族の高齢化が進む中、首相が一日も早い解決を目指すのは当然のことだ。
ただ、北朝鮮は拉致問題に関して不誠実な対応を繰り返してきた。14年5月のストックホルム合意では、日本人拉致被害者らの再調査を約束し、特別調査委員会を設置する一方、日本が調査開始時に独自制裁を一部解除することを決めた。
しかし北朝鮮は再調査の報告を先送りし、その後に核実験や弾道ミサイル発射を強行したため、日本は新たな独自制裁を決定。北朝鮮はこれに反発し、再調査の中止と調査委の解体を宣言した。こうした経緯を踏まえれば、無条件の日朝首脳会談でどれほどの成果を上げられるか疑問は残る。
挑発には毅然と対応せよ
北朝鮮が挑発を繰り返すのであれば、日米をはじめとする国際社会は毅然(きぜん)と対応することが求められる。