大統領府HPの請願掲示板

「重複投票が可能」で物議醸す

 韓国大統領府のホームページには「国民請願掲示板」というのがある。ここに要望を書き込んで賛成が一定数に達すると政府関係部署の長がリアクションすることになっている。文在寅政権が「国民の声を聞いている」という姿勢をアピールする仕掛けだ。

 ところが、ここへの投票が操作できることが分かり、物議を醸している。月刊朝鮮(5月号)が報じた。

 現在、最も票を集めているのが「野党の自由韓国党を解散させよ」という“請願”だ。4月末の時点で100万件を超えた。与党支持者による保守野党への攻撃である。これに対して、野党支持者が与党「共に民主党解散」という掲示板を立てた。対抗策であるが、4月末で10万人にすぎず、衆寡敵せずである。両党の支持率を反映するとすれば、この差は大き過ぎる。何か操作があるのではないかと考えた同誌の記者がからくりを突き止めた。

 結果は「重複投票が可能」ということだった。ポータルサイトのネイバーのIDを用いて2回、無料会話アプリのカカオトークとフェイスブックのアカウントでもそれぞれ同一人物でも重複投票が可能だった、という。

 「大統領府の国民請願同意回数に虚数があることは以前にも指摘されて」おり、「無分別な重複同意がなされているのでは」という問題提起もあったようだが、改められた形跡はないのだ。

 タレントの人気投票であれば罪もないだろうが、大統領府への請願で、一定数に達すれば当該長官(閣僚)が対応する、つまり政府を動かせるとなれば、虚数や操作があってはならない。実際に政府が「自由韓国党の解散」を検討したということもないが、それでは大統領府のHPが単なる“遊び場”に終わってしまうことになる。

 大統領選挙でネット操作疑惑が提起されるなど、日本以上にネットが発達している韓国でこそ起きる騒動だが、逆に政府批判が票を集めたら、どうするつもりなのか、時流が一気に変わり得る韓国政界ではリスクの多いネット投票である。

 編集委員 岩崎 哲