イラン核合意破棄、米朝会談に悪影響 元韓国政府当局者ら


 米国のトランプ大統領は、2015年のイラン核合意の破棄を主張しているが、韓国ではこの問題が、5月か6月初めに行われるとみられる米朝首脳会談に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されている。

 元韓国政府当局者らは、米国が、イランへの制裁緩和と引き換えに核開発計画を停止させた核合意を破棄すれば、北朝鮮は核・ミサイル開発計画放棄に消極的になるはずだとみている。

 韓国のシンクタンク、世宗研究所の上級研究員、ペク・ハクスン氏は、イラン核合意と北朝鮮の核交渉は「北朝鮮指導部の感覚では密接につながっている」と指摘、イラン核合意が破棄されれば、米朝会談での「北朝鮮の判断に非常によくない影響を及ぼす」と語った。

 韓国では、トランプ氏が、イラン核合意を強く非難してきたボルトン元国連大使を大統領補佐官(国家安全保障担当)に任命したことで、核合意破棄へと傾いたとの見方が強まった。

 トランプ氏は昨年10月、イランが核合意を順守していないと判断、この合意に参加している英、仏、独に対し、「重大な欠陥」を持つ合意の修正を5月12日までに受け入れなければ、米国は一方的にイランへの制裁を再開すると最後通告を突き付けていた。

 韓国陸軍の元中将で北朝鮮アナリスト、チョン・インボン氏は、「(米朝交渉は)イラン核合意と強い相関関係があると思う。合意が維持されなければ、朝鮮半島の核問題に影響が及ぶ」と指摘した。韓国国立外交院の安全保障・統一研究部のジョン・ボングン部長も、「政権が変われば、合意も変わるというメッセージを送ることになる。…米朝の交渉を困難にする」と懸念を表明した。

 韓国政府内ではイラン問題には触れられていないとされているものの、元当局者は、政府内では「間違いなく懸念の声がある」と語った。また、ボルトン氏が3月の指名数日後に、北朝鮮に対して「リビア方式」を取るべきだと語ったことも、北朝鮮の反発を招いたとみられている。

 ブッシュ(子)政権は03年12月にリビアの独裁者カダフィ大佐と、制裁緩和と西側との関係正常化と引き換えに核物質の放棄で合意した。北朝鮮は、11年に民主化運動「アラブの春」でカダフィ氏を殺害したのが米国が支援する反政府組織だったことから、小国が核兵器を放棄してはならないという教訓として捉えているという。

 ペク氏は「イラン核合意が破棄されれば、カダフィ大佐のケースとも比較されることになると思う」と指摘した。