対北朝鮮政策、首相はさらなる圧力強化を


 衆院選は「安倍1強」体制が維持される結果となった。自民党は定数465のうち、公明党と合わせた与党で3分の2を上回る313議席を獲得した。

 数字が示す重要なことは、安倍政権がとりわけ強調した北朝鮮危機への対応に向け強固な政権基盤が築かれたことである。安倍晋三首相は北朝鮮に対する圧力を一層強化すべきだ。

 核・ミサイルの脅威増大

 安倍首相は先月、衆院解散を表明した際に少子高齢化や北朝鮮の核・ミサイル開発への対処を重要課題に挙げて「国難突破解散だ」と述べた。北朝鮮情勢が緊迫する中での解散は野党などの批判を浴びたが、首相は「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅かしに左右されてはならない」と反論した。

 北朝鮮は昨年来、合計30発以上の弾道ミサイルを発射。先月初めには6回目の核実験を強行した。核・ミサイルの能力は着実に向上しており、脅威は増大している。

 しかし選挙期間中、北朝鮮危機をめぐる論戦は深まらなかった。首相は遊説の主な柱として「圧力強化路線」の継続をアピール。一方、かつて防衛相を務めた小池百合子代表(東京都知事)率いる希望の党は、日米韓の連携によって「制裁の厳格な実施を働き掛ける」と公約に明記したものの、小池氏が街頭などで言及することはあまりなかった。

 こうした中、共産党の志位和夫委員長は米朝対話に向けた働き掛けを主張。「(首相は)外交の努力をせず、軍事ばっかりだ」と批判した。

 だが北朝鮮が核を放棄しない限り、対話が実現しても核・ミサイル開発のための時間稼ぎに利用されるだけだろう。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議がそうだったことを思い起こす必要がある。共産党の主張は北朝鮮を利するものであり、極めて無責任だ。

 北朝鮮の脅威に対処するには日米同盟の一層の強化が欠かせない。集団的自衛権行使を限定容認する安全保障関連法が昨年3月に施行され、今年に入って海上自衛隊の艦船による米艦防護や米イージス艦への給油などが行われた。

 しかし、共産党は安保関連法を「違憲」として廃止を主張。立憲民主党は公約に「立憲主義を破壊する安保法制を前提とした9条改悪とは徹底的に闘う」と盛り込んだ。日本の安全を危うくするものだと言わざるを得ない。

 衆院選で多くの国民の支持を得た安倍政権には、北朝鮮への圧力を一層強化し、北朝鮮に対する国際包囲網構築を主導することが求められる。国内においてもミサイル防衛態勢の充実や敵基地攻撃能力の導入を進めるべきだ。

 拉致解決も最重要課題だ

 首相は解散表明の中で「拉致・核・ミサイル問題の解決なくして、北朝鮮に明るい未来などあり得ない」と訴えた。

 北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんが拉致されてから来月で40年を迎える。被害者家族の高齢化も進んでいる。拉致問題を解決し、全ての被害者の帰国を実現することも安倍政権の最重要課題である。