衆院選で韓国各紙、「戦争できる国へ」に過度な警戒心示す
文政権の安保失政には嘆き節
自公連立与党が改憲発議に必要な国会総議席の3分の2以上を超える313議席を獲得した衆議院選挙の結果を受け、韓国では各紙社説が過度と思われるほどの警戒心を露(あら)わにした。
発行部数最多で保守系の朝鮮日報は安倍首相が「自衛隊の存在を憲法に明記すると公約に掲げた」ため、「任期中に『戦争できる国』に向かうという宿願を達成しようとするだろう」と指摘した。
またリベラル系のハンギョレ新聞も「平和憲法体制を破り『戦争できる国』を可能にしようというもの」とした上で「戦犯国である日本の再武装は中国と韓国の反発を招き、新たに北東アジアの緊張を高める要因」と決め付けた。
日本で改憲の先に軍事大国化や友好国・韓国への軍事介入を連想するのは、一部の極端なリベラル派くらい。韓国の場合、保守・リベラルの違いを問わず「改憲=戦争ができる国=朝鮮半島への軍事介入」という被害者意識のフレームで語る風潮が根強い。これは「日帝(日本による統治時代)の悪夢が生々しい私たちとしては決してありがたいことではない」(中央日報)ためとみられる。
一方、各紙は北朝鮮の核・ミサイル脅威という「北風」への対応を有権者に訴えたことが圧勝につながったと分析。森友・加計問題で支持率低下の「崖っぷちに立たされていた安倍政権を救ったのは北朝鮮の金正恩政権の火遊びとこれを放置した中国だった」(中央日報)とする皮肉交じりの見解まで飛び出した。
各紙は今後、日本が米国とより緊密に連携するとの見通しを伝えながら、その半面、韓国・文在寅政権の安全保障政策では嘆き節も目立った。
セゲイルボは文大統領が「南北関係の運転席に座る」と語ったにもかかわらず、今月初めの米朝衝突の危機に「『われわれが主導的に何かできる状況ではない』と言った」とし、半島問題への対応が「支離滅裂」と斬った。
日韓関係では「当面の課題は安保協力」(韓国日報)である一方、歴史認識問題では「日本の再武装が加速すれば否定的側面が大きい」(文化日報)。ただ、政権交代を機に日韓「慰安婦」合意などの見直しを進め、自ら関係悪化を招いている自国政権への言及はないままだ。
今回の選挙中に来日した韓国大手シンクタンク世宗研究所の陳昌洙所長は、文政権について「『日米には圧力を強めてもらっても構わないが、韓国は対話も模索する』という方針を日本を通じてトランプ米大統領を説得することもできたはずだが、今の韓国は日本との信頼関係すら築けておらず、チャンスを逸したのではないか。こういう時にこそ韓国には保守政権が必要だった」と指摘した。
(編集委員・上田勇実)






