朴大統領辞意、一刻も早い政情の安定を


 韓国の朴槿恵大統領は「与野党が議論して安定的に政権移譲する方策を作ってもらえば、その日程と法手続きに従って大統領職から退く」と述べ、2018年2月の任期満了前に辞任する意向を表明した。

大統領が任期途中で辞任すれば、韓国では1987年の民主化以降、初めてのことになる。北朝鮮による数々の挑発行為など韓国を取り巻く国際情勢は厳しい。一刻も早く超党派で政情を安定させ、北朝鮮の脅威に対応できるようにするとともに日韓関係強化に向かってほしい。

 友人が国政介入疑惑

 朴大統領をめぐっては、親友の崔順実被告が国政介入疑惑で起訴され、検察が大統領も「共謀関係にあった」との判断を下した。国民の間でも極めて強い反発があり、ソウルでは5週連続で退陣を求める大規模な抗議集会が開かれていた。支持率も最新の世論調査では歴代最低の4%にまで落ち込んだ。

 これについて、朴大統領は「ただの一度も自らの利益を求めたり、私心を胸に抱いたりせずに生きてきた」と強調。共謀関係にあったとの検察の捜査結果を否定している。一方で「周辺をきちんと管理できなかったのは私の大きな過ちだった」と指導者としての責任を認めた。

 その上で「自らの進退問題を国会の決定に委ねる」と明言した。自身の辞任の時期や、辞任後に大統領の職務を代行する体制、次期大統領選挙の日程などを与野党の協議で決めるように委任した格好となった。

 崔被告は民間人の非公式な側近として朴大統領に対して強い発言力があり、時には大統領を意のままに動かして私腹を肥やしていたとも言われる。

 韓国は制度やルールよりも人脈が優先する社会だ。リーダーとそれに忠誠を誓う部下との関係が幅を利かしており、ポストや利権もその関係で与えられ、外枠にいる者は「政敵」として排除されることが多かった。

 さらに朴大統領と崔被告との関係の背景には、韓国で特に強いと言われる男性優位の伝統への反発がある。初の女性大統領として孤独に悩み、ストレスを抱えた朴大統領は親しい相談相手として、また心を癒やしてくれる友として崔被告と深い信頼関係にあったとされる。

 父の故朴正煕元大統領は側近である韓国中央情報部(KCIA)の金載圭部長に暗殺された。そのせいか、朴大統領の対人不信感は異常に強く、政策遂行に必要な側近たちとの対面すら避けてきた。

 周囲の者が崔被告と関係を断つよう再三助言したが、朴大統領は聞く耳を持たなかった。批判されることを極度に嫌う朴大統領の性格もあって、側近たちは次々と離れていった。

 日韓関係強化望む人物を

 任期満了前の朴大統領の辞任表明で、当初来年12月に予定されていた韓国大統領選挙が早まることは必至となったが、問題は候補者選びだ。有力候補として潘基文国連事務総長や最大野党「共に民主党」の文在寅元代表、第2野党「国民の党」の安哲秀前共同代表らの名が挙がっている。超党派で国政の再建に当たり、日韓関係強化を望む人物の登場を期待したい。