ミサイル防衛、北の挑発に備え強化急げ
防衛省はミサイル防衛(MD)システムの強化に向け、若宮健嗣防衛副大臣をトップとする検討会を設け、議論を開始する。
今年に入り、北朝鮮による弾道ミサイル発射が相次いでいることを考えれば、当然のことである。
防衛省が検討会設置
検討会では、地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」など、米軍の新しい装備品の導入を含め議論し、2017年夏までにMDの在り方をまとめる。
THAADは、弧を描いて飛来する弾道ミサイルが落下している「ターミナル段階」で対処する迎撃システム。大気圏外の高高度でのミサイル防衛を担うイージス艦搭載ミサイル「SM3」と、着弾直前の低高度で迎え撃つ地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の隙間を埋めることができる。
導入を急ぎ、弾道ミサイルに対する防衛力を強化する必要がある。
米韓両政府は今年7月、THAADの在韓米軍への配備を正式に決定した。日本に導入されれば、米韓両国との情報共有や効率的な運用も期待される。
日本は韓国とは異なり、自衛隊が直接THAADを運営する計画とされる。THAADはレーダーとミサイルを搭載する複数の車両で構成されていて、レーダーは既に青森と京都に先行配備されている。稲田朋美防衛相は来月中旬に米領グアムを訪問し、米軍のTHAADを視察する予定だ。
北朝鮮は今年に入って2回の核実験を実施したばかりでなく、ミサイル実験を繰り返し、発射されたミサイルは計20発以上に達した。技術力を向上させ、核弾頭の小型化も進んでいると考えられる。
8月には、北朝鮮が発射した中距離弾道ミサイル「ノドン」が秋田県・男鹿半島沖250㌔の日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。北朝鮮のミサイルの弾頭部分が日本のEEZに落下したのは初めてだ。事前に兆候をつかむことが困難な発射台付き車両(TEL)が使われたとみられており、日本政府は破壊措置命令を発令していなかった。
9月にも北海道・奥尻島西方約200~250㌔付近の日本のEEZに落下するなど、北朝鮮のミサイルの脅威は急速に高まっている。
日本全土がノドンの射程圏内に入り、国民の間にも安全保障上の不安が広がりつつある。THAAD導入に向けた啓発も求められる。
北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に違反するものだ。国際社会は制裁強化などで圧力を高め、北朝鮮の非核化を実現しなければならない。
日米韓は一層の協力を
6月には、日米韓による弾道ミサイルの探知・追跡演習が米ハワイ沖で行われた。また日韓両政府は今月、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に署名し、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射などに関して情報を補完し合う。
北朝鮮を牽制(けんせい)するためにも、日米韓の防衛協力を一層強化する必要がある。