米韓合同演習、北に付け入る隙与えるな


 米韓両国は定例の合同軍事演習を韓国各地で開始した。北朝鮮による核実験と長距離弾道ミサイル発射、その後の国連安保理制裁決議に対する各種の威嚇などで、その軍事的脅威がいつになく増している中、演習は米軍約1万7000人、韓国軍約30万人が参加する過去最大規模になる。北朝鮮に付け入る隙を与えない盤石の防衛態勢が求められる。

韓国侵攻の野望捨てず

 演習はコンピューターを使用した指揮系統の連携確認が主体となる「キー・リゾルブ」が今月18日まで、両国の陸海空軍および海兵隊など実動部隊による野外機動訓練「フォール・イーグル」が来月末まで行われる。

 演習期間中は、米国から原子力空母「ジョン・C・ステニス」が派遣され、最新鋭ステルス戦闘機F22やステルス爆撃機B2などが投入される。今年は韓半島有事を想定し隔年で行われてきた模擬上陸作戦「双竜」が実施される年でもあり、その模様は一部、マスコミ公開される。米国の垂直離着陸輸送機オスプレイも参加する。

 また、作戦計画「5015」と呼ばれる先制攻撃の訓練も今回初めて行われる。北朝鮮が実際に全面戦争を仕掛けて来なくても、例えば核・ミサイル攻撃など局地挑発の兆候が確認された段階で先制打撃を加え、被害を未然に防ぐというものだ。

 このほか、最高指導者・金正恩第1書記をはじめ要人を暗殺するための特殊部隊の訓練も含まれているという。

 米韓がこうした訓練を行うのは、言うまでもなく北朝鮮の独裁政権が極めて好戦的で韓国侵攻の野望をいまだに捨てていないためだ。

 金第1書記の統治スタイルは即興的、衝動的と言われる。米韓としては防衛態勢をどんなに固めたとしても安心していられる相手ではない。

 米韓演習が実施されるたびに北朝鮮は猛反発してきた。今回も国防委員会の声明で演習を「共和国(北朝鮮)の自主権に対する露骨な核戦争挑発」と非難し、「われわれの軍事的対応措置もより先制的、攻撃的な核打撃戦になる」と脅してきた。

 北朝鮮は日ごろから過激な表現で日本や米国、韓国に対する非難を繰り返してきたため、こうした脅し文句を額面通りに受け止める向きは少ない。北朝鮮としては5月の党大会に向け内部結束の効果を狙っている側面があろう。一触即発の危機感を煽(あお)り、相手国の世論を分断させて対北融和論を広めたいとの思惑もあるかもしれない。

 むしろ警戒すべきはサイバーテロなど奇襲攻撃だ。韓国情報当局は、北朝鮮が先月末から今月初めにかけて韓国政府要人のスマートフォンをハッキングし、通話や文字メッセージの内容を盗み出したと明らかにした。虎視眈々(こしたんたん)と機会をうかがい、確実に攻撃するのが北朝鮮のやり方だ。

日米韓連携の強化を

 日本も韓半島の軍事的脅威に細心の注意を払い、米国との強固な同盟関係や共通の価値観を有する隣国・韓国の重要性に基づき、日米韓3カ国の連携強化で北朝鮮の暴走に歯止めを掛けなければならない。