温暖化対策、革新的技術の開発が不可欠だ
政府は温室効果ガス排出削減策に関する「地球温暖化対策計画」案を公表した。排出量を2030年までに13年比で26%削減する政府方針の達成に向けたもので、50年までに80%削減を目指す長期目標も示した。温暖化を抑制するには、省エネの取り組みとともに革新的技術の開発が欠かせない。
政府が計画案を公表
計画では26%削減の実現に向け、温室ガスのうち二酸化炭素(CO2)の削減目標を25%とした。部門別では、企業や病院などの業務部門が39・7%、家庭部門が39・4%、電力・ガス会社などのエネルギー部門が27・5%、運輸部門が27・4%となっている。
一方、省エネが既に進んでいる産業部門は6・5%とした。経済成長を妨げないことを念頭に置いたもので、妥当な目標と言えよう。
達成に向け、電力使用量が蛍光灯の6割で済む発光ダイオード(LED)など高効率照明の普及率を100%にするため、蛍光灯や白熱灯を実質的に製造できなくするといった対策を示した。省エネ法に基づき発電効率の低い石炭火力発電所を造れないようにするほか、再生可能エネルギーについて「最大限の導入拡大と(電気料金引き上げなど)国民負担の抑制の両立を図る」方針も明記した。
また、太陽光発電や燃料電池などを使い、住宅のエネルギー消費量をおおむねゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」を20年までに新築戸建て住宅の半数以上まで増やすとしている。燃料電池は30年には一般家庭に530万台導入することを目指す。新車販売のうちハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの次世代車が占める割合を30年までに5~7割とする。
温暖化が進めば、洪水につながる豪雨や熱中症が増加するほか、コメや果樹などの栽培にも影響が出ると予測されている。対策計画を着実に実行することが求められる。
しかし、それだけでは足りない。26%削減の達成には、原発の活用が必要だ。安全が確認できた原発の再稼働や運転延長を進めなければならない。また、長期目標は現時点で達成の見通しは立っていない。革新的技術の開発が不可欠だ。
計画では、今春策定する「エネルギー・環境イノベーション戦略」に基づき、有望な技術分野で研究開発を強化する方針を明記した。この戦略は、CO2排出量を大幅に削減し、日本が優位性を発揮できる次世代地熱発電や蓄電池など8分野に予算を重点配分するものだ。
こうした技術開発で、日本が世界の温暖化対策をリードし、存在感を高めていくことが求められる。環境分野の技術協力で途上国の排出を増やす「2国間クレジット制度」(JCM)の活用も進めるべきだ。
一人ひとりの意識向上を
温暖化対策では、国や地方自治体、企業だけでなく、国民一人ひとりの意識向上も必要だ。省エネ機器への買い替えや公共交通機関、自転車の利用など、小さな積み重ねを大切にしたい。政府は一層の啓発に努めてほしい。