韓国与党惨敗、文氏は外交見直しの契機に


 韓国で実施された首都ソウルと第2の都市・釜山での市長補欠選挙で与党が惨敗した。選挙結果は文在寅政権に対する審判の性格が色濃く、レームダック(死に体)化は避けられそうにない。文氏はこれを機に外交政策の見直しを図ってはどうか。反日路線の強行や過度な北朝鮮への融和策を政権浮揚につなげようとせず、任期末に実のある外交を展開してほしい。

日韓関係に汚点残すな

 両市長選では政権審判を訴えた保守系の最大野党「国民の力」の候補が圧勝した。具体的な政策や候補の人物評価がほとんど争点にならなかったのは、それだけ国民の間に文政権への不満がたまっていたからだろう。

 今回の選挙は来年3月の大統領選の前哨戦と位置付けられていた。それだけに文政権にとって衝撃的な結果だったに違いない。このまま世論の支持を回復させられなければ、大統領選で野党に政権を譲り渡す可能性が高まる。

 しかし、巻き返しへ国内政治を優先させるあまり、外交で実益のない政策を取り続けるのは賢明とは言えまい。

 文氏は就任後、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる2015年の日韓政府間合意を「被害者中心主義」を盾に一方的に反故にした。1月には元慰安婦らが起こした裁判の一審判決がソウルであり、驚くことに主権免除は認められず、日本政府に賠償金支払いが命じられた。

 今月も同様の訴訟で判決が予定されている。賠償支払いが命じられた場合、日本は文政権を相手に関係修復は難しいと判断せざるを得なくなる。元徴用工判決に基づき韓国の原告が、差し押さえられた日本企業の資産を現金化する問題も大きな火種として残ったままだ。

 強硬な反日路線の与党議員たちが多数いる中、文氏にはもう議員たちを説得して日本に譲歩するほどの推進力はないとの見方もある。だが、事態を放置して日韓関係に汚点を残すのか、最後にリーダーシップを発揮して関係改善を模索するのかは文氏次第だ。

 対北融和策も実益があったとは言い難い。南北融和ムードの演出ばかりが先行し、北朝鮮に完全非核化を迫る姿勢は見られなかった。

 文政権は経済発展や朝鮮半島の平和定着に向け中国重視の傾向が強いが、米中対立の狭間でこうした方針に固執すれば、米国との同盟関係や日米との安保協力は後退を余儀なくされる。

 また、東京五輪・パラリンピックを舞台に再び米朝対話が実現するよう仲介役を果たそうとしていると言われる。だが、北朝鮮は五輪不参加を宣言した。日本も拉致・核・ミサイルで周辺諸国に深刻な脅威を与える北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の訪日を歓迎しないだろう。

 国内政治の都合に合わせた外交に執着するのは無理がある。仮にそれを進めても同盟・友好国と良好な関係を築くことはできない。

期待したい国益重視

 就任以来、大型選挙で負けなしだった与党が今回初めて惨敗した。文氏にはこれを政策見直しの機会としてほしい。外交でも国益重視を期待したい。