北の新型ICBM、最大級の警戒が必要だ


 北朝鮮は朝鮮労働党創建75年に合わせ、首都・平壌で大規模な軍事パレードを行い、これまでに把握されていなかった超大型の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)など新型兵器を登場させた。核・ミサイル開発の手を緩めない金正恩体制の武力挑発路線が改めて浮き彫りになった形だ。日本をはじめ周辺国は最大級の警戒が必要だ。

 「スケジュール通り」

 登場したICBMは、2017年に北朝鮮が試験発射し、米本土を射程に入れるとみられるICBM「火星15型」より大きく、ミサイルを搭載した車両は片側11輪の長さだった。専門家は世界最大級とみており、ミサイルが本物であれば約3年で技術改良したことになる。

 弾頭部分も従来より大きいとみられ、複数の弾頭を装着できる可能性があるという。同時多発的な攻撃で相手の迎撃を困難にさせる狙いがあるようだ。

 試験発射されていないため、実用化までの課題をクリアしているかは不明だ。だが、パレードの式典で演説した金正恩朝鮮労働党委員長は「わが軍事力はスケジュール通りにその発展速度、質量ともに変化している」と述べた。国際社会による制裁が長期化する中にあっても軍事力を増強し続けていることへの自負をのぞかせたと言えよう。

 また、パレードには胴体部分に「北極星4」と記された新型とみられる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も登場した。長さが従来より短く、実際に潜水艦に収めることが可能との見方もあり、実用化に近づいているようだ。

 正恩氏はかねて自国の核・ミサイルを「戦争抑止力」と称し、自衛手段と強調してきた。実際、米本土攻撃能力を視野に入れたICBMやSLBMの開発を進めるのは、米国に北朝鮮攻撃を思いとどまらせる抑止力として有効と判断したからだ。

 だが、ひとたび体制内部で政変など異変が起きた場合、核・ミサイルは抑止力以外の目的で使用される恐れがある。北朝鮮のような独裁国家では為政者に対する牽制(けんせい)機能が働きにくく、政策決定を誤ればその脅威はどこに向かうか予測不可能だ。日本をはじめ周辺国はこうした不測の事態に備え、万全の迎撃態勢を整えなければならない。

 この日の演説で正恩氏は米国を名指しで非難することは避けた。来月の米大統領選の結果を見極めるつもりのようだ。トランプ大統領再選となれば、また非核化交渉に乗り出し、制裁解除を引き出したい考えだろう。交渉を有利に運ぶためにも必要なのがICBMやSLBMだ。

 だが、完全非核化には程遠い措置で、見返りに制裁解除を求める北朝鮮のやり方を米国はすでに見抜いている。制裁はさらに延長され、国内経済は逼迫(ひっぱく)の度合いを増すだけだ。正恩氏には非核化に踏み出すほか経済再建の道は残されていない。

 賢明でない終戦宣言

 韓国の文在寅大統領は朝鮮戦争の終戦宣言が必要だと何度も言及しているが、賢明とは言えない。終戦宣言には、北朝鮮を非核化に向かわせ、真の平和を定着させる上で何の効力もない。平和ムードだけでは何も変わらないことを直視すべきだ。