GSOMIA 破棄は韓国の自害行為だ


 日韓が軍事機密を共有する際に不可欠な両国間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)がひとまず延長されることになった。協定は1年ごとに自動更新され、破棄する場合には更新日の90日前までに通告しなければならないが、期限が来ても韓国から申し出がなかったためだ。

 延長は当然だが、韓国は「いつでも破棄できる」という立場を繰り返し明らかにしている。北東アジアの安全保障を真剣に考える態度とは言えない。

北に幻想抱く文大統領

 GSOMIAをめぐっては昨年、韓国が日本の対韓輸出運用見直しの報復措置として破棄を通告した後、米国の強い説得を受け、失効直前に通告の効力を一時停止した経緯がある。協定は延長されたが、この時も韓国は日本の出方次第でいつでも破棄は可能だと述べた。

 安全保障の要諦をなす協定の破棄をちらつかせ、それを対日カードにしようという韓国の発想には驚きを禁じ得ない。今回は延長されても、選挙など国内情勢を左右できると判断すれば韓国は協定破棄に踏み切る可能性がある。このため、日本は自動延長されるという確信を当面の間持てないだろう。米国務省も協定が日韓両国だけでなく、米国の安保にとって重要だとの認識を改めて示したという。

 かねて日本も米国も文在寅政権の安保観に大きな懸念を抱いてきた。特に、北朝鮮との融和を進めれば武力攻撃は受けないと文氏が幻想を抱いているのではないかという点についてだ。

 金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談で南北間の軍事的緊張緩和を約束しても、北朝鮮非核化を議題とした米朝首脳会談の仲介をしても、北朝鮮は核・ミサイル開発を一向にやめない。その軍事的脅威が韓国に向けられたものでないと、どうして断言できようか。

 韓国にとって北朝鮮の軍事動向を把握する上で不可欠になるのが、日米の偵察衛星から得られる情報だと言われる。また北朝鮮が発射した弾道ミサイルを迎撃するための探知でも、韓国は海上自衛隊のイージス艦レーダーや米国の衛星などによる追跡情報とリンクされて初めて盤石の態勢に近づける。

 北朝鮮から軍事攻撃を受けるような一刻を争う場面で、協定があれば韓国は日本が取得した情報を即座に共有できるが、協定がなければ米国経由で入手しなければならなくなる。文氏がそれでも日本とのGSOMIAを破棄すると言うのであれば、それは自国民の生命と安全を危険にさらす自害行為に等しい。

 協定破棄は韓国の安保を危険にさらすだけでなく、日米韓3カ国の連携を揺るがし、北東アジア安保で中国と利害がぶつかる米国の戦略にも支障を来す恐れがある。米国の強い反対を押し切ってまで協定を破棄するとは思えないが、すでに日米の信頼を失いつつあるという点では憂慮すべき事態と言える。

安保は政治と切り離せ

 文氏は国内保守派を攻撃するため、対日強硬路線を政治利用してきた。だが、安保問題は国内政治と切り離して考えるべきだ。GSOMIAの価値は延長すべきか否か悩むほど軽いものではない。