朝鮮戦争70年 現在も続く北の武力挑発


 1950年6月25日の朝鮮戦争勃発から70年になる。戦争は北朝鮮が韓国に武力侵攻して始まり、米国をはじめとする国連軍と中国軍が参戦して3年余りの死闘の末、休戦協定が結ばれて現在に至る。この70年間、北朝鮮は韓国に武力侵攻する野望を捨ててこなかったばかりか、核やミサイルの開発で北東アジアに深刻な脅威を与えている。

独裁体制の中朝に問題

 戦争勃発には当時の国際政治が影を落としていた。日本統治からの解放後、自由民主主義を建国精神に据えた韓国は米国の支援を受け、共産主義に共感を覚えた指導者の下で北朝鮮はソ連の協力を得た。その意味で米ソ覇権争いの代理戦争であり、体制競争の産物だった。

 実弾が飛び交い、多数の死傷者を出す惨劇は休戦で消えたが、南北の対立はほぼ同じ構図で現在も続いている。ソ連崩壊などで東西冷戦が終結した後、韓国との同盟関係を強化する米国が北東アジアで対峙(たいじ)するようになったのが北朝鮮の後ろ盾である共産党一党独裁の中国だ。

 だが、それは決して双方に対等な名分があった上での争いだったとは言い難い。世界で多くの人々が自由と平和を享受するようになった今日もなお自国民の基本的人権を抑圧し、武力挑発や覇権主義で周辺国を脅かす北朝鮮とこれを支えてきた中国には大きな問題があった。

 70年の歳月が経過しても朝鮮半島が終戦を迎えられずにいるのは、北朝鮮と中国が独裁体制によって得た既得権を捨てずにいることに根本原因がある。朝鮮半島情勢を見る時、こうした視点を忘れてはならない。

 近年、特に憂慮されるのは武力による朝鮮半島統一を放棄していない北朝鮮に融和的な韓国・文在寅政権の姿勢だ。

 文氏は一昨年の韓国・平昌冬季五輪への参加を皮切りに韓国への融和政策に舵(かじ)を切った北朝鮮の主張を無条件的に受け入れ、金正恩朝鮮労働党委員長のトランプ米大統領との首脳会談を橋渡しした。だが、結果は北朝鮮が完全非核化に応じる考えがないことが分かっただけでなく、米国との交渉の裏で核・ミサイル開発の手を緩めなかったことが判明した。

 文氏が北朝鮮の善意を信じたとすれば一国の指導者としてはあまりにも危険であり、こうなると予想すらしなかったとすれば楽観的過ぎると言わざるを得ない。北朝鮮が在韓米軍撤収を視野に入れて望んだとされる終戦宣言に文氏が同意したのも軽率の誹(そし)りを免れない。

 このところ正恩氏の妹、与正氏が対韓国政策を総括する責任者として韓国非難の談話を繰り返し発表し、その指示通り北朝鮮は融和の象徴でもあった南北共同連絡事務所を爆破した。制裁緩和という最大の目標を達成できなかった不満を韓国にぶつけた形だ。文氏はこれでも融和路線を見直さないのだろうか。

新たな脅威に備えよ

 北朝鮮は昨年から低高度の各種ミサイルを発射し、日本にとっては新たな脅威だ。陸上配備型の「イージス・アショア」の計画が技術や期間の問題で撤回されたが、北朝鮮に誤ったメッセージを送ることがないよう万全の迎撃態勢構築が急がれる。