韓国与党圧勝、対日強硬続くなら毅然と臨め
韓国の総選挙で革新系の与党「共に民主党」が単独過半数の議席を得て圧勝した。選挙は文在寅政権に対する中間評価の意味を持っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で政策論争はかすみ、危機管理に対する政権への期待感が与党に集まったとみられる。
日本にとって懸念されるのは文政権の対日強硬路線が維持される公算が大きいことだ。毅然(きぜん)とした態度で臨む必要がある。
反日感情煽った文政権
文政権発足後の日韓関係は戦後最悪と言われるほどまでこじれた。特に一昨年の韓国大法院(最高裁)による元徴用工判決とそれによって作り出された国際法違反の状態を韓国政府は是正せず、溝は深まった。
現在、新型コロナ危機が世界を覆う中、両国ともその対応に追われ、関係改善への関心は低下しているのが実情だ。だが、今回の与党圧勝で残念ながら韓国の対日強硬路線には変化を期待しにくくなったことは念頭に置くべきだろう。
文政権が対日政策を決定するプロセスは、青瓦台(大統領府)秘書官ら一部の側近が主導権を握り、外交実務に責任を負う外交部にはほとんど権限がなかったことなどに問題があると言われる。国内政治向けに反日感情を煽(あお)ることが繰り返され、日本との関係を犠牲にしたことは否めない。
文政権が与党圧勝をこれまでの政策に対する国民の圧倒的支持と受け止め、さらに対日強硬路線を強める可能性もある。
今回の選挙では、保守系の最大野党「未来統合党」が惨敗し、議席を大幅に減らした。文政権の過度な反日に待ったをかけるなど政府・与党の偏った外交に対する牽制(けんせい)機能が十分果たされなくなる恐れがある。
徴用工問題では、賠償を命じられた日本企業の韓国内資産が差し押さえられ、原告側はすでにその現金化の手続きに入っている。新型コロナ危機が終息すれば現金化に踏み切る可能性もあり、そうなれば関係悪化は深刻になろう。
日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても、韓国は日本が対韓輸出規制強化の撤回に応じなければいつでも破棄できるとの立場を堅持している。一時は破棄を宣言し、安全保障に不可欠な枠組みを対日カードに使って日本や米国を驚かせた。再び破棄を言いだせば3カ国の安保連携に今度こそ修復困難なひびが入るだろう。
今回の選挙では、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐり被害者を支援してきた市民団体のトップが与党系の比例代表用政党から出馬し当選した。慰安婦問題をはじめ日韓の歴史認識問題でさらに強硬姿勢が打ち出されるのではないかと懸念される。
大統領選でまた利用か
韓国では再来年に大統領選挙がある。今回の総選挙をめぐり与党シンクタンクが「反日は総選挙で与党に有利」と分析した報告書を作成していたことが分かって物議を醸した。大統領選でも同じように判断した場合、反日が利用されることは十分考えられる。
日本は韓国の政策に振り回されず、本来あるべき両国関係を見据え毅然と臨むしかない。