金正恩氏は核放棄しない、脱北の北高官がトランプ氏に書簡


北エリートへ心理戦強化を

 北朝鮮の金正恩政権の高官だったとされる脱北者がトランプ米大統領に書簡を送り、トランプ氏は、金正恩朝鮮労働党委員長に非核化すると「だまされて」おり、米政府は、北朝鮮のエリートらに働き掛け、北朝鮮の内部から金氏を排斥させることを目指す「心理戦」を強化すべきだと訴えていた。

 ワシントン・タイムズが入手した書簡でこの高官は、北朝鮮に対し「全面的な制裁を科し」、核施設に対する「先制攻撃」の準備をするよう求めている。

 書簡は「金正恩が権力を握っている限り、非核化は永遠に不可能だ。(金氏は)核兵器を、生き残りを図る最後の手段と考えているからだ」と指摘、米朝交渉の背後で、北朝鮮の核の脅威は強まっていると訴えた。

 その上で「北朝鮮の問題を解決する最も効果的な方法は心理戦。核兵器と変わらない力を持ち、北朝鮮の人々に自身で問題を解決させる理想的な方法だ」と北朝鮮エリートらへの働き掛けによる内部からの体制崩壊の実施を呼び掛けた。

 書簡は、ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)とフッカー国家安全保障会議(NSC)アジア部長代行に宛てられたもので、情報筋によるとこの高官は、朝鮮労働党の「幹部」を30年間務めたという。米政府当局者は、1年以上前に脱北し、米政府機関に重要な助言を行っていると指摘、書簡については「大統領と金正恩氏との関係を悪化させる可能性」があり、ホワイトハウスがトランプ氏に知らせていない可能性を示唆した。

 この脱北者はワシントン・タイムズとのインタビューで、核兵器は、韓国を北朝鮮の「極度の社会主義制度」に吸収し、「狂信的な、疑似宗教」社会を維持するために不可欠であり、金氏が核兵器を手放すことはないと主張した。

 また、交渉が行き詰まっていることで、核と弾道ミサイルの能力がイランなど中東地域に拡散する危険性が高まっていると指摘した。

 書簡は、「核やミサイルによる挑発があった場合、核施設を攻撃するオプションを常に保持していなければならない」と主張、「パンフレットや電子メディアを使って、米国の軍事力を将軍やエリートらに知らせ、士気を削(そ)ぐ」よう働き掛けている。

(ワシントン・タイムズ特約)