GSOMIAの裏側

最初から読みを間違った韓国

 「最悪の日韓関係」になった「起源」と、日米韓同盟と南北平和プロセスの共存が可能なのかについて、月刊中央(12月号)がソウル大日本研究所の南基正(ナムギジョン)教授に聞いている。

 南教授はソウル大、東大大学院卒、東大法学部教授を経て現職。「日本の代表的知韓派知識人和田春樹東大名誉教授の弟子」という“知日派”である。

 南教授の基本認識は、「冷戦を前提に成立した東アジア秩序は韓米日安保三角形が支える構造であった。この枠組みを変えて、新しい秩序を立てようとする目標が韓半島平和プロセス」という観点で、この共存、つまり三角同盟を維持しつつ、南北平和構築が可能なのかということである。

 今日の日韓関係の悪化は直接的には韓国大法院の「徴用工判決」(2018年10月)によるものだが、さらに遡れば同年の米国と南北韓外交が活発化した時だと指摘する。つまり東アジアの安保秩序に変化が出始めたことが「起源」だったという解釈だ。

 これまで歴史問題では一貫して日本の譲歩を引き出してきた韓国は、大法院判決で初めて日本の強い反発を受け「対日外交で困難を体験」する。韓国の分析では、徴用工判決もそうだが、安保秩序変化に日本が対応しようとする際、「日本技術の絶対的優位」が対抗策たり得ると気付いたことで、韓国は手痛い反撃を受けた、いうことだ。日本政府にそうした思惑があったのかどうかは不明だが、あまりにも深読みのし過ぎの感もある。

 また、いったんは南北外交に米国を引き込んだものの、日本を追い込むつもりで出した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の脅しが、図らずも米国を日本側へ戻したとも見ている。これを本気で言っているとすれば、読みが最初から間違っている。GSOMIAはそもそも米国の要請で韓国が求めて締結したもので、最初から対日カードにはなり得なかった。

 それにまるで“米国の取り合い”が東アジア秩序を決めるかのような言い草だが、あまりにも一面的だ。国際情勢が読めない根本的原因がこのあたりにありそうである。

 三角同盟と南北平和プロセスは対立するものではない。南教授は「韓半島で事を進めるとき、日本の協調を求めなければならない」と述べているが、これはまさにその通りで、韓国政府の「日本排除」では南北関係も東アジア安保も成立しない。

 より根本的には「植民地支配の不法性」をめぐる日韓の解釈の差が今日の諸問題の根源にある。相変わらず「不法」の前提に立って「賠償を求めないが、真剣な謝罪を」式の解決策を模索しているが、これまで繰り返されてきたことで、知日派の提案がこの程度とは少し残念である。

 編集委員 岩崎 哲