北ミサイル発射、日米韓は連携を乱されるな
北朝鮮が日本海沿いの咸鏡南道・連浦付近から弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下させた。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が回避された直後の武力挑発で、北朝鮮の脅威に対抗する日米韓3カ国の連携を乱そうという思惑もありそうだ。揺さぶりには断固たる態度で臨みたい。
情報共有試した可能性
ミサイルは高度約100㌔、飛距離約380㌔に達し、8月、9月、10月にそれぞれ発射されたものと同系統の固体燃料推進方式だったという。発射間隔は1分未満で実戦配備を想定した連射とみられている。これで今年、北朝鮮による弾道ミサイル発射は13回目となり、特に8月以降は新兵器開発をにらんでいるようだ。
朝鮮中央通信は飛翔体を「超大型ロケット砲」だと主張し、弾道ミサイルという日本の見方を非難する談話まで発表したが、弾道ミサイル技術は利用していないとして国連安保理決議違反との批判を回避するための詭弁(きべん)と見ることもできる。
今回の発射はGSOMIA破棄が撤回された直後であったため、日韓および日米韓3カ国の情報共有に何か変わりはないか探った可能性がある。韓国は破棄撤回後も日本の対韓輸出運用厳格化に不満を漏らすなど日本への反感がくすぶっている。
米国も韓国との間で在韓米軍駐留経費の分担交渉が難航しており、GSOMIA破棄をめぐる一連の騒動で韓国への不信感を募らせている。日米韓3カ国の防衛連携に乱れが生じかねない事態に付け込むように北朝鮮が武力挑発した側面はあろう。
日米韓3カ国の防衛当局は連携の乱れを虎視眈々(たんたん)と狙う北朝鮮を念頭に協力を一層強化しなければならない。
韓国の文在寅政権は依然として徴用工判決など日韓関係悪化の根本原因に向き合おうとしていないが、安全保障をめぐる日韓協力をないがしろにするようなことだけは避けるべきだ。
北朝鮮はすでに米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発にめどを立てたとされる。日韓を射程に入れる各種短・中距離弾道ミサイルは実戦配備済みだ。
その上さらに新兵器開発を急ぐのは、米国との非核化交渉を有利に運ぶためのカードを増やす狙いがあるのではないか。北朝鮮は年末を期限に、米国に敵視政策の撤回や米韓合同演習の中止などを強く求めている。
今回の発射は北朝鮮が2017年11月に「火星15」と称するICBMを発射させながら「国家核戦力の完成」を宣言してからほぼ2年になる日だったため、国威発揚の意味があったとの見方もある。経済制裁による国内の不満を外部に向けさせたい思惑もあるかもしれない。
日本上空通過を示唆
北朝鮮外務省の日本担当副局長は談話で、日本上空を通過するミサイルを近く発射すると示唆した。日米韓3カ国は、北朝鮮が非核化に応じる構えを見せても、一方で核ミサイル開発の手を緩めていないという認識の上に立ち、連携を乱されないようにしなければならない。