豪の中国人スパイ、日本にとって人ごとではない


 香港と台湾、オーストラリアで中国のスパイ活動に関わっていた男性が豪州への亡命を希望し、中国の政治干渉活動に関する膨大な情報を豪当局に提供していたことが明らかになった。

議会への浸透工作を証言

 亡命を希望しているのは王立強氏。王氏は豪州に多くの中国人スパイが潜んでおり、一部の議員は中国当局と強いつながりがあると証言した。豪保安情報機構(ASIO)のマイク・バージェス長官は「外国による介入」と題した異例の声明を発表。中国当局の議会への浸透工作について捜査に取り組んでいるとした。

 王氏は、中国の情報ネットワークが香港と台湾でも特殊任務に就いており、情報収集や攪乱(かくらん)情報流布、メディアの買収、世論工作をどのように展開しているかを暴露した。

 王氏は香港で軍の情報部に所属して情報収集に努めたほか、大学への浸透を図ったという。大学生に中国に同調するような意見を拡散して親中派を増やす一方、武闘派にもシンパを装ってスパイを潜り込ませ、メンバーの割り出しをさせた。香港独立を訴える香港民族党へもスパイを潜入させていることなどを証言している。

 また、中国は情報機関に命じて2020年の台湾総統選での蔡英文政権転覆を指令し、フェイクニュースや攪乱情報を流布するためにメディアを駆使していることなども明らかにした。王氏は「世論工作の重点はフェイスブックなどインターネットにもあり、サイバー部隊が組織されていて、フェイスブックのネットを容易に破壊できる」と明言。王氏自身も昨年11月に実施され、与党・民進党が大敗した統一地方選に介入したことを明かした。

 王氏は王強名義の中国旅券、香港永久住民身分証および韓国旅券を所持しており、これらを使用してスパイ活動に携わったという。豪州の報道番組では「帰国すれば命はない」と述べ、中国に戻れば死刑に処されると訴えた。

 一方新華社は、王氏が16年10月、詐欺罪で福建省光沢県人民法院(地裁)から懲役1年3月、執行猶予1年6月の判決を言い渡され、19年2月には自動車輸入投資事業をめぐる詐欺で被害者から460万元(1元は約15・5円)余りを騙(だま)し取った人物で、所持している中国旅券と香港永久住民身分証はいずれも偽造だと伝えた。

 中国外務省も、王氏に関する報道を「犯罪嫌疑をかけられ、全く信用できない人物の話を採用している。稚拙な茶番だ」と否定している。

 中国人スパイの活動は、日本にとっても決して人ごとではない。12年5月には、在日中国大使館の1等書記官に農林水産省の機密文書が漏洩(ろうえい)した疑いが持たれた。07年3月には、自動車部品メーカー「デンソー」の最高機密を盗み出した中国人技師が逮捕されている。

スパイ防止法の制定を

 日本にはスパイを取り締まる法律がないため「スパイ天国」と言われてきた。
 スパイ防止法の制定と本格的な防諜(ぼうちょう)機関の設立を急がなければならない。