ウクライナが中国に軍事協力

ビル・ガーツ

 中国は、戦略的戦力投射の基盤となる空母1隻を配備、大規模な軍備増強の一環として少なくともさらに3隻を配備する計画を進めている。中国国営メディアによると、空母運用の一環として開発された新型の超音速ジェット練習機、教練10(JL10)が今月中旬、公開された。教練10にはウクライナ製のエンジンが搭載されており、同国の中国への軍事協力に懸念が高まっている。

 中国当局者らによると、教練10は艦載機、殲15(J15)の海軍パイロットの訓練機として使用される。

 公開されたのは12機で、ウクライナのジェットエンジンが搭載されているが、国営紙・中華日報はこれについて報じていない。

 中国の航空産業はこの10年余り、ジェットエンジンの開発に手を焼いてきた。その問題を解消するために中国は、ウクライナとロシアのエンジンをコピーし、国内で生産しようとしたが失敗し、両国から購入したエンジンを使用している。

 これを受けて、ウクライナに圧力をかけて、ジェットエンジンなど軍需品の中国への売却を停止させるようトランプ政権に求める声が上がっている。中国専門家で、上院外交委員会の顧問を務めたウィリアム・トリップレット氏は、ウクライナは中国が抱えるジェットエンジン生産の問題解決を支援していると主張、「中国人パイロットの着艦訓練の促進に手を貸すべきでない」と訴えた。

 教練10公表の1カ月前、国防総省はウクライナへ2億ドルの軍事支援を行うと発表した。支援は指揮・管制システム、通信の安全、軍の機動力の強化、暗視装置、軍用医療機器に使用される。

 トリップレット氏は「ウクライナは一方で米国の税金を受け取り、他方で米海軍の背に刃を突き付けている」と語った。

 米国は中国が戦略的競合国であり、米軍との軍事衝突の可能性もあるとみており、ウクライナは中国軍の強化に使用されるジェットエンジンと軍需品の売却を停止すべきだ。

 中国は2016年にウクライナのエンジンメーカー、モトール・シーチ社と教練10用エンジンの売買契約を結び、20基が引き渡された。契約総額は3億8000万ドルで、計250基が引き渡される。中国はモトール・シーチの買収をもくろんでいるが、ウクライナ政府は買収を承認していない。

 国際評価戦略センターのリチャード・フィッシャー上級研究員は、「中国がモトール・シーチを支配すれば、中国軍が世界中に航空戦力を投射する能力の強化は加速されることになる」と指摘、米国はモトール・シーチの売却阻止へウクライナに圧力をかけるべきだと主張した。

 中国は依然、ウクライナ製兵器の主要購入国となっている。教練10のエンジン以外にも、戦車用のディーゼルエンジン約50基、旅洋2型、旅洋3型ミサイル駆逐艦用のタービンエンジンが売却されたばかりだ。

 09年には、ズーブル級エアクッション型揚陸艇2隻を導入。さらに2隻の揚陸艇がウクライナの支援を受けて中国で製造される予定だ。また16年、ウクライナの国営軍需企業ウクロボロンブロムから、空中給油機イリューシン78Mを4500万ドルで導入した。