マクロン仏大統領就任1年 支持率50%、改革に一定の支持

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、今月14日に就任から1年を迎えた。外交では欧州連合(EU)を支え、国際協調路線を取る一方、内政ではフランス国鉄(SNCF)改革で反発する労組のストライキに直面している。1年目の成果はどう評価されているのだろうか。
(パリ・安倍雅信)

外交は国際協調主義路線

 昨年5月、史上最年少の39歳の若さで大統領に就任したマクロン氏の最新支持率は50%。就任当初の支持率からは落ちているものの、国鉄労働改革での労組の抵抗を考えると悪い数字とはいえない。

マクロン大統領

笑顔を見せるフランスのマクロン大統領=10日、独西部アーヘン(AFP=時事)

 4月から始まった、5日間のうち2日間繰り返すストライキは、政府との協議が不調のため、予定通り6月28日まで継続される見通しだ。公共交通機関を使う一般市民の不満に加え、物流のマヒで悲鳴を上げる企業は多いにもかかわらず、フィリップ首相の支持率も54%と落ちていない。

 フランス大統領は元来、法的根拠はないが、外交が中心で、内政は首相に任せる慣例があった。その不文律は2007年に就任したサルコジ大統領によって破られ、以来、大統領も内政に深く関与するようになっている。マクロン氏と二人三脚のフィリップ首相の支持率が悪くないのは、政権自体が支持されていることを意味している。

 サルコジ氏は65%という高い支持率で船出したが、政権末期は25%まで落ち込んだ。左派のオランド前大統領も末期は20%を切っていた。

 マクロン氏は国民戦線のルペン候補を破って大統領に就任したが、極右のルペン氏への反対票が多く、圧勝でも高い支持率というわけではなかった。

 それでも、多くの有権者が右派・左派の既存大政党の政権運営に苛立ち、時代遅れの規制を壊す新しい候補者への期待が高まっていたのも事実。それが大統領選の1年前に「前進」という政治運動を立ち上げたマクロン氏の当選につながった。

 就任翌月に実施された国民議会(下院)選挙でも、マクロン氏の中道新党「共和国前進」が圧倒的議席を占め、前例のない大量の新人議員を誕生させた。その裏で既存政党はベテラン議員も含め、議席を大きく失う結果となった。

 このため、マクロン政権を支えているのは、既存政党や官僚によって築かれた規制や既得権益にメスを入れることを支持する層といえる。彼らは、政治イデオロギーの強いフランスで、現実主義を支持する有権者で、右派支持層から左派支持層まで非常に幅広い。それがマクロン氏の強みとなっている。

 外交においては、国際協調路線を鮮明にしている。トランプ政権初の国賓として4月に訪米し、米議会演説でトランプ大統領との考え方の違いを明確に表明。イラン核合意破棄や保護貿易主義の間違いを教師が生徒に教えるように演説し、存在感を示した。

 一方、英国のEU離脱と米国第一主義のトランプ大統領と向き合うマクロン氏は、通商政策での手腕が問われている。30歳で投資銀行の副社長を務め、オランド政権で経済相を務めたマクロン氏に対する有権者の最大の期待は経済再生にある。

 内政では、就任3カ月で支持率急落を招く出来事があった。国防予算削減を公に批判した仏軍トップのヴィリエ総合参謀総長に対して「私が(陸海空3軍の)長」「決めるのは私だ」と言い放ち、辞任に追いやったマクロン氏の態度に国民は独裁者の印象を受けた。

 それに続く労働法改正案の成立では、議会を通さないオルドナンス(政府の委任立法権限)を使い、強行したことで批判を受けたが、これまでのところ改革は進んでいる。

 フランスは今、既存政党をいったん捨て、右でも左でもない中道の若きマクロン氏に賭けている状態といえる。マクロン改革への批判も根強いが、停滞するフランス経済の再生には改革以外に選択肢はないと考える国民は多く、それが支持率に表れているといえそうだ。