「芸術は前進だ」
UKロックの新星 シンガーソングライター ジェイク・バグと会見
英国のシンガーソングライター、ジェイク・バグ(Jake Bugg、22)のコンサートが15日夜、ウィーン市内で開かれた。それに先立ち、サウンドチェック前のバグと会見した。バグは今年7月、新潟で開催された「フジロックフェスティバル16」に参加したばかりだ。
(ウィーン在住フリージャーナリスト オガワ・カミヨ〈Ogawa Kamiyo〉)
自身の境界線を広げる
バグは6月17日、3年ぶりに新アルバム「On My One」を出した。18歳でデビューした最初のアルバム「ジェイク・バグ」は英国のアルバムチャートでナンバーワンになった。神童とか、「ボブ・ディラン」の再来とも言われてきた。
バグは大の日本ファンで、「源氏物語」を読んだりしている。「日本人はとても礼儀正しい国民で驚いた。今からでも日本に戻ってコンサートをしたいぐらいだ」という。
作曲については「形式にとらわれず、さまざまなスタイルの歌を作りたい」と強調。6月に出した3枚目のアルバムの中では「最も個人的な思いが込められている曲は、『Never Wanna Dance』で、自信作は『The Love We’re Hoping For』だ」と明らかにした。以下、一問一答の抜粋。
今年のフジロックフェスティバル16で演奏するなど、これまでも数回日本でコンサートを開いているが、日本のファンについてどう見ているか。
とても感じがいい。日本でコンサートするのは好きだ。これからも日本にいる時間をもっと持てればと本当に思っている。日本はすごい国だ。今すぐにでも日本に戻りたいよ。
2年前、英国のメディアとのインタビューの中で、源氏物語を読んでいると答えている。どうして源氏物語を読もうとしたのか。
まだ読み切ってはいない。本屋で見つけ、著者と本の説明をちょっと読んで興味を持ったのさ。中世の日本が舞台で当時の宮廷の様子がイメージできる。その時代の人間の生活が分かるのは、クールで面白い。
あなたの1年間の音楽活動の総括を聞かせてほしい。
3枚目のアルバムはファンを少し分裂させたと思っている。新しいファンがコンサートに来てくれている。これまで以上に若い層だ。これはクールだ。しかし、僕が今作ろうとしている次のアルバムはまた違う。
次のアルバムに対する基本的なアイデアはまとまっているのか。
実際に取り組む前にはいかなるアイデアもない。とにかく、書き、何が起きるかを見、それとうまくやっていくのさ。
――あなたは多くの曲をこれまで作曲してきたが、あなたにとってどの曲が個人的に意味があり、どの曲を特に誇りたいか。
僕の最も個人的な曲は多分、この新しいアルバムの中の「Never Wanna Dance」だ。自分にとって寂しい曲だ。しかし、個人的な思いが込められた曲だ。僕が当時、ある人に対しどのように感じてきたかを描いた曲だ。しかし、3枚目のアルバムの中で自信を持っている曲は「The Love We’re Hoping For」だ。これは暗い曲で、僕が願っているWest Coast Soundだ。僕は暗い曲が好きなんだ。
最新アルバム「On My One」について、少し説明してほしい。
とにかく、これまでの二つのアルバムとは異なっていて、ダンスやソウル音楽の要素が入っている。それは一種の実験みたいなものさ。
多くの人々は自分のスタイルにはまり込む…
正直いって、どうしてそんなことしなくちゃいけないのか分からないね。芸術は前に進むものであり、創作活動は自身の境界線をどんどんプッシュし、広げていくものと思う。もちろん、それは時には良いが、悪いこともあるけれどね。
「Bitter Salt」はもともとフォークソングだったが、プロデューサーのJacknife Leeがそれを現在のようなソングとした。Lee氏はフォークスタイルが好きではなかったのか。
僕はフォーク版が好きだが、歌のスタイルなどはどうでもいいのさ。僕が作曲した曲である限り、同じだ。Jacknifeは曲を変えていない。多くのダンスと少しポップ風にアレンジしただけだ。クールだと思ったよ。歌を作曲する時、さまざまなスタイルを考え、その中から自分が選ぶわけだ。
最後に、英国は欧州連合(EU)離脱を問う国民投票(6月23日実施)で、EU離脱を決定したが、音楽活動にどのような影響が考えられるか。
国境での監視チェックが出てくるから少し煩わしいが、まだ何も言えない。誰も何が生じるか分からないからね。