ウクライナは検察改革など民主化進めよ


 ウクライナは欧州連合(EU)との経済協力を深化させる「連合協定」の締結を見送った。ウクライナ製品の締め出しや、天然ガス輸出停止などを示唆するロシアの圧力に屈した形だ。

 一方、EUとの交渉ではウクライナの民主化停滞も改めて浮き彫りとなった。ウクライナは検察制度改革や選挙法改正など民主化を進める必要がある。

 ロシアの圧力に屈する

 ヤヌコビッチ政権がロシアを選択せざるを得なかった理由の第一は、この国が置かれた歴史的かつ地政学的な地位と無関係ではない。ロシアの起源はウクライナのキエフ・ルーシであり、ソ連時代から豊富な工業・農業資源を有する同国は「プーチン大統領にとっては戦略的に重要なモスクワの裏庭」(11月25日付ワシントン・ポスト紙)なのだ。

 第二に、ロシアの圧力、脅しである。プーチン政権はベラルーシ、カザフスタンと結成した独自の統一経済圏「関税同盟」を15年までには「ユーラシア経済同盟」に発展させる計画だ。ウクライナをこの構想に取り込めない場合、経済を中心に旧ソ連地域の再統合を目指すプーチン政権にとって大きな打撃だ。

 ロシアは今年8月、ウクライナ産品のほぼ全品目を対象にした事実上の禁輸を一時導入したほか、同国への天然ガス輸出停止も示唆し、欧州接近を強く牽制(けんせい)してきた。ウクライナにとってロシアは、天然ガスの大半を輸入し、貿易額の32%(11年)を占める最大の貿易相手国だ。経済不況にあえぐウクライナがロシアの締め付けを無視することは到底できない。

 第三に、首相在任中のロシアとの天然ガス取引をめぐる職権乱用罪で訴追され、11年8月に逮捕、同年10月に禁錮7年の実刑を受けて投獄されたティモシェンコ前首相の釈放と赦免をEU側は「連合協定」締結の主な条件としていた。

 EUとウクライナは昨年3月にすでに「連合協定」に仮調印していた。しかし、EU側は本調印を見合わせ、ティモシェンコ女史の逮捕には「政治的な動機」があるとして、同女史の出国治療のほかに、検察制度の改革や選挙法の改正も、締結条件として出してきた。ティモシェンコ女史は持病の椎間板ヘルニアの悪化で痛みを訴え、昨年5月刑務所から病院に移されたが、病気治療のためのドイツへの出国を希望していた。政権与党の地域党は療養後の再収監を譲らず、結局、ウクライナ最高会議(議会)はティモシェンコ女史の出国関連法案を否決した。

 2年後の15年に大統領選挙を控える大統領は、政敵のティモシェンコ女史が政治家として復帰し、強力な対抗馬となることに強い懸念を抱いているといわれる。議会による法案否決は筋書き通りということであろう。

 欧米の基準に近づけよ

 「連合協定」締結見送りは、経済が低迷し、資源エネルギーをロシアに大きく依存するウクライナにとって苦渋の選択だったろう。もっとも、ウクライナの民主主義がEUの求めるレベルに達していないことも事実である。司法制度改革や選挙法改正などを行い、民主主義を欧米の基準に近づけるべく努力すべきだ。

(12月2日付社説)