COP19合意で新たな枠組みへさらに努力を


 ポーランドのワルシャワで開かれていた国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)は、2020年以降の温室効果ガス削減目標を、すべての国が15年に開かれるCOP21の前に提出するとの合意文書を採択して閉幕した。

 会議を1日延長してのぎりぎりの合意だったが、温室効果ガス削減の新たな枠組みへ向け何とか前進することができた。

残された多くの課題

 米国そして世界最大の排出国・中国を含む途上国も入れた、すべての国が削減目標を掲げることが決まったが、温室効果ガス削減に実効性のある新しい枠組みがCOP21でつくられるためには課題が多い。

 京都議定書のように、削減の数値が、「義務」ではなく「自主的目標」であること、また新枠組みの削減期間を20年から何年間にするか、さらに基準年を何年にするかなど、はっきりしない面が多々ある。

 真に実効性ある枠組みとなるかどうかは、世界の温室ガスの40%以上を排出している米国と中国が相応の削減目標を設定することにかかっている。この両国が低い目標を掲げれば、両国に次いで排出量の多いインドなど途上国でも削減は進まなくなるだろう。

 日本は今回、20年までに温室効果ガスを05年比3・8%減らすことを発表した。予想されたことだが、これに対しては、各国から批判が集中した。新目標は、京都議定書の基準年である1990年比では約3・1%の増となる。各国はこれを「後退」と捉えたのだ。

 温暖化対策をリードしてきた日本が「後ろ向き」と見られることは、温室効果ガス削減の世界的な動きに水を差すものとなりかねない。福島第1原発事故後、全国の原発が停止し、温室ガスを大量に排出する火力発電に大きく依存する事情を一応理解はしても、世界の捉え方はシビアである。特に、日本の不十分な取り組みは、米国、中国その他の国々が十分な削減努力を回避する口実となる。

 政府は年内に、中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を策定する。その中で、一番の問題は原発による発電の比率をどこまで持っていけるかだ。

 原発再稼働への見通しが不透明といわれるが、原子力規制委員会の審査の基準は定まっている。科学的、技術的な問題以外にも、啓発活動など努力すべきところはたくさんあるはずだ。最大限の努力をして、少しでも早く原発が再稼働できるようにすべきである。

 今回日本が発表した20年までの削減目標も、今後原発が再稼働した場合は、その分目標を上乗せし、新たな目標として内外に表明すべきである。たとえ小さな数値であったとしても、わが国が決して温室効果ガス削減に消極的でないことを示し、削減運動にプラスに働くだろう。

より高い削減目標を

 そして20年の目標設定については、原発再稼働のほか再生可能エネルギーによる発電量の増加や二酸化炭素の地中固定などの環境技術の開発利用を行い、より高い目標を掲げられるようにしたい。

(12月1日付社説)