南シナ海で「航行の自由作戦」 、トランプ政権下で初


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 米海軍は24日、南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美済)礁から12カイリ(約22㌔)内に艦艇を派遣する「航行の自由作戦」を実施した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙など複数の米メディアが報じた。同作戦の実施は昨年10月21日以来で、トランプ政権発足後は初めて。

 米メディアによると、滑走路の整備や兵器を格納できるとされる施設の建設が続いていたミスチーフ礁の人工島の12カイリ内を駆逐艦「デューイ」が航行した。

 トランプ政権は北朝鮮の核・ミサイル開発への対応で中国に協力を求めていることから、同作戦の遂行を控えているとの見方があり、批判されていた。今回の実施で、南シナ海の領有権主張や軍事拠点化は、これまでと同様に看過できないという立場を示す狙いがあったとみられる。

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南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美 済)礁=2015年5月 撮 影、フィリピン国軍関係者提供(時事)

 米太平洋軍のハリス司令官は先月26日、下院軍事委員会で「航行の自由作戦」について「近く実施するつもりだ」と証言していた。

 国防総省当局者はWSJ紙に対して同作戦を実施したかの明言を避けたが、「米軍は南シナ海を含むアジア太平洋地域で日常的に作戦を行っている。(そうした水域は)どの国にも属していない」と語った。

 一方、CNNテレビは、米軍が今年初めに「航行の自由作戦」の遂行を求めたが、米中間の緊張が高まらないよう考慮した国防総省が拒否したと報じている。

(ワシントン岩城喜之)

 航行の自由作戦 国際法ですべての国に保障された海と空の「航行の自由」を守るため、過剰な海洋権益の主張の対象になっている海域や空域に米軍の艦艇や航空機を派遣する作戦。全世界で実施しており、潜在的な敵国だけでなく、同盟国の主張も標的になる。南シナ海では2015年10月以降、南沙(英語名・スプラトリー)諸島と西沙(パラセル)諸島で実施しており、今回で5度目。(ワシントン時事)