南スーダンで来週にも国民統合政府発足

駐独南スーダン大使に聞く

 駐独のシトナ・アブダラ・オスマン南スーダン大使は23日、訪問先のウィーンで本紙との会見に応じた。同大使は同日、オーストリアのフィッシャー大統領に信任状を提出した後、オーストリア商工会議所などを訪れた。同大使は現在、ドイツ、オーストリア、チェコの3国の同国大使を兼任している。
(聞き手=ウィーン・小川敏)

昨年8月締結された和平協定は政府側と反政府勢力双方で破られている。

シトナ・アブダラ・オスマン

駐独オスマン南スーダン大使

 あなたが指摘するように、和平協定は何度も破られてきたが、現在は戦闘は静まってきている。南スーダンは2011年7月、スーダンから独立を獲得したが、13年12月、マシャール前副大統領らがクーデターを企てた。その結果、わが国は政府軍と反政府軍の内戦に突入した。昨年8月、政府側と反政府側が和平協定を締結した後、和平協定は双方によってほごにされ、数千人が犠牲となり、多数の国民が避難民となっている。キール大統領は現在、一方的だが和平協定の履行に全力を投入している。東アフリカの地域経済共同体である政府間開発機構(IGAD)の和平調停案はキール現政権にとって理想的な内容ではなかったが、大統領は署名した。国民のために平和が急務という考えがあったからだ。

国民統合政府はいつ頃発足する予定か。

 民族統合政府の新閣僚リストは既に出来上がっている。新政府は30閣僚から構成され、キール大統領派から16閣僚、マシャール前副大統領派から10閣僚、シルク系2、その他から2の計30閣僚だ。キール大統領は反政府勢力の指導者を第1副大統領に任命することも明らかにした。国民統合政府は早ければ来週にも、遅くても数週間以内に発足できると確信している。

南スーダンはディンカ、ヌエル、シルクなどから成る部族社会だ。13年12月のマシャール反政府軍のクーデターでは、部族間の利権の分担問題が大きな原因だったと聞いた。

 クーデターは利権の分割問題が主因ではない。マシャール前副大統領の個人的な政治的野心があったからだ。彼は大統領になりたかったのだ。ディンカとヌエル部族間の闘争ではなく、個人的権力志向が内戦勃発の原因となったのだ。キール大統領主導の国家統合政府案が実現するためには、マシャール前副大統領がジュバに戻り、大統領と共に新しい国づくりに乗り出すことが願われる。キール大統領は問題の解決は対話で実行すべきだと主張している。国民をこれ以上犠牲にする戦闘を繰り返すべきではない。わが国は過去、意味のない戦いのため多くの血を流してきた。

南スーダンの収入の90%を占める原油生産の状況はどうか。

 原油生産はまだ低い水準だ。生産量は50万バレルに至っていないだろう。わが国としては原油生産依存の国民経済から脱皮し、多様な産業を発展させていきたいと考えている。農業、観光業、漁業などわが国の資源は豊かだ。

北スーダンとの連携はどうか。

 北側との間の原油生産、輸出の連携はうまくいっている。わが国はビジネスのために国境線を開放したからだ。われわれは国民経済を成長させるためには他国との連携なくして繁栄できないことを学んできた。その意味でも、北スーダンとの協力関係は大切だ。全ての国境線問題が解決できることを願っている。

日本は南スーダンの発展を願っている。日本は12年1月から国連南スーダン・ミッション(UNMISS)に要員を派遣している。

 わが国は2011年7月の独立後、日本政府からの多くの支援を受けてきた。13年12月のクーデター後もわが国にとどまり支援してくれた。心より感謝している。日本政府関係者、国際協力機構(JICA)を通じてさまざまな支援プロジェクトが推進中だ。私自身も日本を訪問し、JICAのトレーニングを受けてきたばかりだ。日本からは今後も技術関連のノウハウを希望している。