子宮頸がん予防ワクチンの接種をWHOの“権威”カサに説得
予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う (4)
11月27日午後、衆議院第二議員会館で、みんなの党「女性局」による子宮頸(けい)がんワクチンの勉強会が開かれた。 講師は今野良自治医大附属さいたま医療センター教授。短く刈り上げたスポーティーな髪型が印象的で、眼光が鋭い人物だ。
「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」実行委員長であり、子宮頸がんワクチンのメリットを強調し、同ワクチンの副反応については、因果関係はほとんどないという見解だ。
勉強会では、関連資料をどっさり配布。「子宮頸がん予防ワクチンの接種について―どうしようか悩まれている方へ」と題したペーパーでは、「現時点で、ワクチン接種を行わないと決められた方は、ワクチンの積極的勧奨が再開してから、あらためて、接種の是非をご検討することをお奨めします」と訴えている。
また、世界保健機関(WHO)の諮問委員会である「ワクチンの安全性に関する諮問委員会」(GACVS)が6月13日に発表した、「子宮頸がんワクチンに関する安全性最新情報」の翻訳文を提示した。
翻訳文は日本に関し、厚生労働省副反応検討部会に複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)が重篤副反応として5例提示されたが、同部会はワクチン接種との因果関係を明確にすることができなかった、と指摘。そのうえで、「これらの症例については調査中だが、日本は国の定期接種においてHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種を継続している」と述べている。
今野医師は、厚労省の副反応検討部会が積極的勧奨の一時中止を決定した6月14日の直前に「GACVSの最新情報」が出されたことを重視。
この翻訳とセットのA4判ペーパーで、「WHOが日本での副反応報告も検討したうえで、最新の知見としてHPVワクチンの安全性を改めて確認した意味は重い」と述べている。
しかし、翻訳が言及している副反応検討部会は5月16日に開かれたもの。 実際は、次に開かれた6月14日の副反応検討部会で、委員が「(CRPSなどの)痛み、しびれの原因を調査し、きちんと情報提供できるようになるまで、推奨を控えるべきだ」と判断し、多数決で積極的勧奨を一時中止したのである。
今野氏は、古い情報を駆使し、WHOという“権威”を背景に、わが国が積極的勧奨を中止していることに対し疑問を巧妙に差し挟もうとした。
説明会に参加した同党の青木かの東京都中央区議会議員は、「今野医師は、終了予定時間を大幅に過ぎていたにもかかわらず、新婚の奥さんが子宮頸がんにかかり、最後は命を落としていく映像を強引に上映した」と、子宮頸がんの怖さを刷り込もうとしたことに不快感を表明。
「ワクチンについて余り予備知識がなかった議員さんたちは、この説明会で、ワクチンの積極的推奨を再開してもよいのではないかと思ったのではないか」と危惧している。
(山本 彰)