安保で違い鮮明 「強い米国」訴える共和
2016年米大統領選まで1年(下)
「世界で米国の影響力とリーダーシップを回復させる必要がある」
9月16日にカリフォルニア州で行われた共和党の第2回候補者討論会。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、オバマ政権で失われた「強い米国」を再び取り戻すよう訴えた。
ブッシュ氏は、オバマ大統領が対外政策で失敗続きだったことから、「次の大統領は(就任時から)大きな問題を抱えることになる」と指摘。共和党が政権奪還できなければ、米国の影響力はかつてないほど低下し、取り返しがつかなくなると危惧(きぐ)する。
2009年にオバマ氏が大統領に就任してから約7年。「米国は世界の警察官ではない」と明言するオバマ氏の内向きな対外政策の下で、国際情勢は大きく変化した。中東では過激派組織「イスラム国」が台頭し、ウクライナ問題やシリアへの軍事介入で欧米諸国とロシアは対立を深めている。こうした問題を何一つ解決できる見込みのないまま、オバマ氏は任期を終えようとしている。
共和党の候補者たちは、世界での役割を果たせない米国が続くことに危機感を感じている。カリフォルニア州での討論会では、「この国をしっかりと守る米軍最高司令官が必要だ」(マルコ・ルビオ上院議員)、「米国が世界をリードしていく必要がある」(クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事)などの声が多く上がった。
コロンビア大学のジャスティン・フィリップス准教授は「共和党だけ見れば、大統領選では経済問題に加えて『イスラム国』や中東問題が大きな争点になるだろう」と話す。
だが、一層「内向き」志向が進む民主党で、そう考える人は少ない。
キニピアック大学が4日発表した世論調査では、民主党支持層のうち、来年の大統領選で重要視する政策として「外交」を挙げた人は9%だった。また「テロ」はわずか4%のみで、「ヘルスケア」や「気候変動」を下回った。
当然、党指名を争っている候補者たちも「外より内」の政策が中心になる。
先月13日に行われた民主党の候補者討論会で主な議題となったのは、最低賃金の引き上げや銃規制、貧困対策などだった。
「民主社会主義者」が一定の支持を集めるなど、オバマ氏の影響で左傾化も強くなっているため、安全保障への関心が比較的強い共和党との違いが鮮明になっている。
ルビオ氏は「われわれは、いま非常に危険な時代に生きている。次期大統領は問題をよく理解し、適切な判断ができる人でなければならない」と強調し、民主党政権が続けば、対外政策で迷走したオバマ氏の二の舞いになりかねないと訴える。
「オバマ後」の米国はどこに向かうのか――。共和党政権が返り咲き、再び大国としての「役割」を果たす国に戻るのか、それとも内向きの民主党が続くのか。来年の大統領選は今後の米国だけでなく、国際社会の方向性も決定する重要なものになる。
(ワシントン・岩城喜之)