的外れの共和候補者討論会
メディアの偏向に反論
民主党候補が政権を批判
【ワシントン】共和党は金をくずに変えるという特殊な能力をどこで身に付けたのだろうか。2014年、共和党は選挙で「マサカー(大虐殺)」(エコノミスト誌)を成し遂げた。あれから1年、選挙での勝利の結果、政府機関を閉鎖すると脅すこと以外に共和党は何を成し遂げただろう。ヒラリー・クリントン氏は、電子メール事件とベンガジ襲撃をめぐる不祥事の釈明に追われ、その上、ケビン・マッカーシー院内総務の一度の大失敗と、たった一度の無意味な11時間に及ぶベンガジ公聴会で共和党は、クリントン氏の疑惑を立証できなかった。
また新たな妙技が見られた。宿敵である大手メディアに大勝利したのだ。共和党は、メディアによる敵対的で派手な偏向を半世紀にわたって非難してきた。それには共感を得られたのだが、今度は逆にやり過ぎ、1週間もたたずに失ってしまった。
CNBCの討論会は共和党にとってはチャンスだった。リベラル派が露骨に共和党を見下し、敵対し、尊大な態度を取ったことで、ほかのメディアは思想的なごまかしが利かなくなり、失態を犯した仲間を非難し、嘲笑せざるを得なくなった。その次に共和党は何をしたかというと、波に乗っている間にやめておけばいいものを、1週間の間に幾つも会合を開き、声明を出し、さまざまな要求に関してあれこれと協議した。その中には、今後の討論会で取り上げられるかどうか分からない問題も含まれていた。
第二に、共和党をつまらない政党に見せることに成功した。クリス・クリスティー氏は「ファンタジー・フットボール」が話題になると、経済は最悪、ロシアは活発に活動し、「イスラム国」は攻撃を続けているときにどういうことだと非難した。一方で、候補者らは討論会の室温はどれぐらいがいいかなどと話し合っている。
第三に、共和党は今後も当面、本当の標的に向かうことはない。7年間にわたって巧妙に作り上げられたオバマ政治の残骸を攻撃すべきだが、それができない。皮肉なことに選挙キャンペーンの中で、クリントン氏とバーニー・サンダース氏は歩調を合わせて、経済は低迷、格差は拡大し、中産階級の没落が進んでいると主張した。これは、民主党の統治を真っ向から非難するものだ。これは、本来なら共和党がすべきことだ。ところが、子供のけんかのようにばかにし合い、個人攻撃を続け、何カ月も無為に過ごした。
新たな問題が出てきた。討論会の構成だ。共和党は、CNBCでのような討論会を繰り返したくないと考えている。いったいなぜなのか。あの討論会はマイケル・デュカキス氏以来の共和党の討論会としては最高のものだった。
誰も共和党が勝ったと言ってくれなくても、そんなことはどうでもいい。次の討論会に誰が残っているかなど誰も気にしない。からかわれるのが嫌なばっかりに、どんなリベラルな質問者が選ばれようと論破するという意欲が損なわれている。
ジョン・ハーウッド氏の感じの悪さ、ベッキー・クイック氏の無能ぶりが、司会者の適性をめぐって槍玉(やりだま)に挙げられた。だが、保守派に対するリベラル派の捉え方がどんなに的外れかがカール・クインタニラ氏を見て分かった。クインタニラ氏はベン・カーソン氏に、同性婚に反対していながら、どうして同性愛者の雇用に寛大なことで知られる企業の取締役に名を連ねていられるのかと質問した。結婚の構成を根底から覆すほど人類史の中でかつてない大きな変化に反対することの意味を全く理解していないようだ。ビル・クリントン氏、ヒラリー・クリントン氏、オバマ氏は皆分かっていた。ほんの数年前のことだ。
CNBCの討論会は、共和党の今回の選挙キャンペーン全体の中で一番よかった。共和党員の中にはまだ、討論会を党の「イスタブリッシュメント」に対する内戦の新たな舞台にしようとしていた者もいた。今回の標的は、共和党全国委員会のプリーバス委員長だった。ハーウッド氏が感じが悪いのはプリーバス氏のせいだとでも言っているようだ。
なんということだ。プリーバス氏の仕事、つまり党の仕事は、討論会の回数を抑え、日程を決めることだ。2015~16年選挙戦でそれができれば、大成功だ。11~12年選挙戦で20回もの討論会が自由に行われたことで、共和党は大きな損害を被った。あの終わりのない醜い内紛で、リック・ペリー氏とニュート・ギングリッチ氏がミット・ロムニー氏を「ハゲタカ資本主義」と激しく攻撃したことで、オバマ氏の中傷キャンペーンが功を奏し、勝利につながった。
テッド・クルーズ氏は、ラッシュ・リンボー氏、シーン・ハニティ氏、マーク・レビン氏に共和党討論会の司会者をさせることを提案した。いい考えだが標的が違う。こんなのはどうだろう。リンボーとその仲間たちに、民主党の討論会の司会をさせるのだ。血で血を洗う壮絶な討論会になることだろう。
共和党に関しては、リベラル派にさせればいい。ハーウッド、クイック、クインタニラ氏らの帰還を最後まで求めるべきだ。
(11月6日)