混戦続く共和党 「主流派」浮上なるか

2016年米大統領選まで1年(上)

 来年11月8日に行われる米大統領選まで1年。共和党が8年ぶりに政権を奪還するのか、それとも民主党が3期続けて大統領の地位に就くのか。各候補は支持拡大に余念がなく、早くも選挙戦は熱気を帯びている。(ワシントン・岩城喜之)

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10月28日、米コロラド州ボルダーで開かれた共和党の大統領候補討論会に参加した主要候補。左からブッシュ元フロリダ州知事、ルビオ上院議員、トランプ氏、カーソン氏(AFP=時事)

 10人以上が候補指名争いに出馬している共和党は、元神経外科医のベン・カーソン氏(64)とドナルド・トランプ氏(69)の政治経験がない「アウトサイダー」候補がトップを競う異例の展開が続いている。

 「私は人の悪口を言いたくない」

 10月28日に行われた党候補者の討論会。過激な言動で物議を醸すトランプ氏を横目に、カーソン氏は穏やかな口調で語った。自身の政策を時に笑顔を交えて話すカーソン氏は有権者からの受けがよく、女性やキリスト教保守派を中心に幅広い支持を集めている。

 政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が今月6日までに発表した世論調査の平均では、カーソン氏が党内支持率24・8%で首位を走り、これにトランプ氏が24・6%で続いている。両氏は3位以下を大きく引き離し、いまだに「アウトサイダー旋風」がやむ気配はない。

 だが、専門家らは政治経験のない候補者が予備選を勝ち抜く可能性は低いとみている。

 政治史が専門でアメリカン大学のアラン・リクトマン教授は「最近の共和党を見れば、常に政治経験が豊富な人物が指名されている」と指摘。「(政治家でない)異端児は愛されるが、候補指名されることはない」と断言する。

 選挙予測で定評のあるバージニア大学政治センターのラリー・サバト所長も、トランプ氏らの指名獲得は「非常に疑問だ」とし、予備選・党員集会が始まれば、他の候補者たちが浮上してくるとの見方を示している。

 そうなると、目下の注目は「誰がアウトサイダー候補を追い抜くのか」になる。

 夏以降、徐々に支持を拡大しているマルコ・ルビオ上院議員(44)は、各種世論調査でジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)を抜き3位まで上昇するなど、「アウトサイダーに対抗する有力候補として浮上しつつある」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 ルビオ氏の武器は、候補者で最年少となる若さと議論の巧みさで、「現時点で指名獲得に近いのはルビオ氏だ」(サバト所長)とする意見も多い。

 また、テッド・クルーズ上院議員(44)は「誰が既成政治に立ち向かおうとしているのか」と述べ、ワシントンの政治を本当に変えられるのはトランプ氏ではなく、自身だと訴えることで存在感を増している。

 一方、当初は本命とみられていた穏健派のブッシュ氏は、思うような選挙戦を展開できていない。挽回を狙った討論会でも精彩を欠き、CNNから「窮状に追い込まれている」と報じられるなど、選挙運動の軌道修正を余儀なくされた。

 ただ、予備選・党員集会が集中する3月の「スーパー・チューズデー」まで混戦が続くとする見方もあり、アウトサイダーではない「主流派」の候補者らがいかに勢いに乗れるかが、今後の焦点になる。