アフリカ支援に民間活力 政府はサポートに全力
「世界最後の巨大市場」を見据えて第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が30日、横浜で閉幕した。民間投資拡大のためさまざまな施策が打ち出されたが、社会保障費の増大など厳しい政府の財政事情から、支援策も「官から民へ」の流れが顕著になった。
◇脱ODAが顕著に
「ナイロビのTICAD6で安倍首相は300億㌦を投資すると言ったが」―。閉幕後、アフリカからの外国人記者らが集まる会見で、外務省の紀谷昌彦TICAD担当大使に質問が飛んだ。
安倍晋三首相の基調演説などで強調された数字は「200億㌦」。アフリカへの民間投資で達成した3年間の成果だが、TICAD6の首相基調演説では「官民合わせて300億㌦規模の投資」だった。
今回は「官」の部分は示されず、前回より少ない、あるいはできなかった印象を与えたわけだ。紀谷氏は「政府開発援助(ODA)が100億㌦ある」と数合わせの答えをしたが、民間投資が議論の中心となった分、ODAの存在感が薄らいだ。TICADは、政府の支出を抑える脱ODAへと舵(かじ)を切った。
◇企業側の意識転換
代わって政府は、サポートに全力を尽くすと首相はじめ随所で訴えた。その拠点が外相と経産相が共同議長を務める「アフリカビジネス協議会」だ。29日に開かれた全体会合「官民ビジネス対話」で世耕弘成経済産業相は、同協議会で「アフリカ市場に関心がある、ありとあらゆる日本の民間企業がアフリカビジネスに飛び込んでいけるよう政府を挙げて支援・協力する」と太鼓判を押した。
ただ、同会合で経団連の小澤哲サブサハラ地域委員長は、「アフリカ経済がこの3年間、困難な状況」で「日本企業の進出は停滞」しており、政府に対策を求めた同協議会設置までの経緯を説明した。
「アフリカの国に何か建設した後、お金を払ってもらえるか心配はある」。民間投資が叫ばれるTICAD7のサイドイベント、ビジネスエキスポに出展した企業の職員は言う。これまでODAによるアフリカ事業を請け負ってきたが、企業自らの投資には手堅く臨みそうだ。
貿易振興機構(JETRO)主催のビジネスフォーラムで、アフリカ側の登壇者は「日本企業は国に補償を求める傾向がある」「アフリカのリスクは国際メディアが言うほどではない」など、日本企業関係者に向かって意識転換を迫った。
◇数多く多様な参加
「中国は人を雇っても育てず、使い捨てになる。日本の援助は雇って訓練し、現地の人がやっていけるようにするので信頼されている」。中国によって主要インフラが整うルワンダで支援活動をしている日本人男性(29)が指摘した。
TICAD7には多くの現地ボランティアや各国大使館、各省、国際機関、経済団体、研究機関、団体が集まり、全体会合の他にも数多くのサイドイベントが開催され、約1万人がこれらの会議、セミナー、シンポジウムで議論した。
官民さまざまな声を通して地に着いた情報を基に議論が積み重ねられ、「横浜宣言」や「横浜行動計画」に結論づけられている。その多様性は、一党独裁の中国が巨大投資を宣言するトップダウンとの違いだろう。
運営はボランティアにも支えられた。「滅多にない機会だと思って参加した。忘れられない思い出になった」。学生ボランティアとして参加した上島真友香さん(21)は笑顔を見せた。
友人と一緒に参加した古田圭吾さん(19)は「英語の大切さを思い知った。将来は国際貢献できる仕事をしたい」と、うれしそうに話した。若者の心にアフリカへの関心が芽生えている。
(TICAD7取材班)