桜田五輪相更迭、驕り・緩み猛省し国政に臨め
桜田義孝五輪担当相が「復興より大事なのは(自民党議員)」との発言の責任を取って辞任した。塚田一郎国土交通副大臣が“忖度(そんたく)”発言で辞任に追い込まれてからわずか5日後だ。いずれも「身内」の集会ではあったが、国民の誰もが驚く無神経な発言だった。安倍晋三首相率いる長期政権の驕(おご)り、緩みの表れであり、猛省が必要だ。これを機に初心に戻り国政運営に当たってほしい。
被災者の気持ち傷つけた
桜田氏は10日夜、都内で開かれた自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北)のパーティーであいさつし、被災地の岩手県が地盤の高橋氏への応援を求めた後、「おもてなしの心をもって復興に協力していただければありがたい。復興以上に大事なのは高橋さんだ」と述べた。辞表提出後に自ら述べたように、「被災者の皆さんの気持ちを傷つける発言」に違いない。発言後わずか2時間で辞表提出に至ったのは、報告を受けた首相官邸の意向が働いたためであり、事実上の更迭だ。
官邸が素早い判断を下したのは、「復興五輪」の担当大臣として最も不適切な発言であり、これまで桜田氏の失言が多過ぎたことも考慮されたのだろう。
また、発言のタイミングも最悪だった。塚田氏が自派閥の長である麻生太郎副総理・財務相が力を入れる福岡県知事選の応援集会で、首相と麻生氏の地元を結ぶ下関北九州道路の整備と関連し、「私は忖度します」と語り、野党からの総攻撃を受けて辞任。知事選も麻生氏が推す候補が大敗した直後であり、あまりにも不用意だった。
「内閣全員がより一層身を引き締め、さまざまな批判を真摯(しんし)に受け止めなければならない」。首相は11日、桜田氏の辞任を受けて内閣の引き締めを図った。首相には、閣僚の相次ぐ不祥事による「辞任ドミノ」に続く、2007年「亥年」参院選で惨敗し、わずか1年で退陣に追い込まれた苦い経験がある。
12年の再登板後は、堅実な政権運営で国政選挙に連勝し、6年を超える長期政権となったが、財務省の公文書改竄(かいざん)、厚生労働省の統計不正、統一地方選挙の知事選での与党分裂選挙など、政府・与党の驕りや緩みがさまざまな形で噴出している。
今進行中の後半国会は、子ども・子育て支援法改正案や児童虐待防止関連法改正案などが焦点となるが、大型の与野党対立法案はない。ただ、大阪12区と沖縄3区で衆院補選が行われており、7月に参院選が控えているため、野党は首相の任命責任や「問題閣僚」に焦点を定めた攻勢を一層強めよう。政府・与党は桜田氏の更迭を一罰百戒として、政権復帰時の感謝、気概、責任感あふれる初心に戻り、国政に当たるべきだ。
野党は政権受け皿目指せ
野党は、公文書改竄や統計不正問題のように政府の「オウンゴール」でしか得点を挙げられない状態が続いている。内外に重要案件が山積する中、政府批判だけに熱を上げる野党にどうして政権を任せられるだろうか。経済運営や国防、憲法改正など国家の根幹に関わる問題で、政権の受け皿となり得る骨太の論議を期待したい。