北方領土問題、ロシアに足元を見られるな
ロシアのプーチン大統領は、日露平和条約締結交渉に関して「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」と述べた。北方領土返還後に米軍が展開することを懸念しての発言だが、日本が到底のめない条件だ。ロシアがまともに交渉を行おうとしているとは思えない。
大統領が米軍展開を懸念
ロシア紙コメルサントは、プーチン氏が交渉について「テンポが失われた」と語ったと報じた。同紙によれば、北方領土を日本に引き渡した場合に日米安保条約に基づき、米軍が展開する可能性があることが交渉の障害になっているとの見解も改めて示した。
ロシアにとって北方領土周辺は太平洋への出入り口であり、北方領土に地対艦ミサイルを配備するなど軍事拠点化を進めている。プーチン氏は以前から、北方領土を日本に返還した後、米軍基地が置かれることを懸念していた。しかし日米同盟は日本外交の基軸であり、安保条約からの離脱という選択肢は考えられない。
北方領土は日本固有の領土である。第2次世界大戦末期の1945年8月9日、旧ソ連は当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾した後の同年8月28日から9月5日までの間に北方四島を占領した。
ロシアは大戦の結果、北方領土を合法的に領有したと主張している。しかし米軍展開への懸念があるからといって、条約違反の不法占拠を正当化して返還に応じようとしないことは許されない。
一方、安倍晋三首相とプーチン氏は昨年11月の首脳会談で、歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎として交渉を進めることで合意した。首相は歯舞、色丹の返還と残る国後、択捉2島での共同経済活動を組み合わせた「2島プラスアルファ」での決着を模索しているとみられている。
だが、これでは国後、択捉が返還されないのではないかとの懸念が残る。国後、択捉も日本固有の領土であり、一日も早く返還を実現すべきであることを忘れてはならない。
先月7日の「北方領土の日」に開かれた北方領土返還要求全国大会では、採択した大会アピールで例年使用している「北方四島が不法に占拠され」との表現が盛り込まれなかった。ロシアとの平和条約締結に向け、ロシア側を刺激することを避けたものだが、これではロシアに足元を見られるだけだろう。
ロシアのガルージン駐日大使は、日本の対露制裁について日ソ共同宣言に違反すると主張。先進7カ国(G7)の対露包囲網からの離脱を暗に日本に要求した。
対露制裁は、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合を受けてのものだ。クリミアと北方領土はロシアに不法占拠されているという点で共通しており、日本は北方領土返還と共にクリミア併合の撤回をロシアに強く求める必要がある。
4島返還の原則堅持を
首相は4島返還の原則を堅持すべきだ。北方領土問題で成果を焦ってはならない。