日中韓環境相会合、海洋ごみ解決は共通の願いだ


 日中韓3カ国の環境相会合が中国・蘇州で開かれ、深刻な海洋汚染をもたらしている廃棄プラスチックなど海洋ごみ問題の解決に向けて連携していくことで合意した。

 海を美しい自然に戻していくことは共通の願いだ。領土問題で対立を抱えながらも互恵的な取り組みであり、国同士の信頼関係を増幅し平和に寄与していくことを期待したい。

海産物の食の安全脅かす

 3カ国環境相会合は世界的な地球環境問題への意識の高まりを背景に、1999年から北東アジア地域の環境問題に対処するため毎年開催されている。

 この間、安全保障や歴史認識などの問題では、それぞれの国家間関係が停滞する場面も見られたが、環境相会合は継続してきた。これは地球環境問題が国益以上に重要な高次の課題であるからにほかならない。

 海辺の景観を損なう漂着ごみのほとんどはプラスチック製品だ。漁網、ロープ、飲料水のペットボトルなど各種容器、買い物袋、食品トレー、飲食物はじめさまざまな商品の包装などプラスチック製品があまりにも広く普及したためである。

 プラスチックごみは年月がたって砕けて小さくなっても分解されて自然に戻ることはない。海に流出すると微細な粒子状の「マイクロプラスチック」となって漂い、魚が餌と間違えて捕食してしまう。

 このため、海の生態系への影響が懸念されるとともに、マイクロプラスチックには有害物質が付着するケースもあるため、食物連鎖でより大きい魚に有害物質がたまり、海産物の食の安全を脅かす恐れがある。

 残念だが、わが国は海に囲まれた海洋国でありながら、欧州諸国に比べて海洋ごみ問題への対策で後れを取っている。欧州連合(EU)は先月、海洋汚染に対処するため使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を提出しており、28カ国の批准と欧州議会での承認を目指している。

 昨年の先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)でも海洋ごみ問題への取り組みは合意されていた。ところが、日本と米国は今月カナダのシャルルボワで開かれたG7サミットでプラスチックごみへの対策を具体化させる「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。準備不足と言わざるを得ないだろう。

 しかし、環境相会合では来年わが国で開かれる20カ国・地域(G20)の関係閣僚会合で海洋ごみ問題を主要議題にすることに同意した。3カ国でリーダーシップを発揮すべきだ。

 菅義偉官房長官は「海洋ごみ対策は1カ国、さらにはG7や先進国だけの努力で解決できるものではない」との安倍晋三首相の発言を引用。G20に向けてプラスチックごみの削減・再使用・再生利用を徹底するため「プラスチック資源循環戦略」を策定する考えを示した。

 分解される製品の普及を

 わが国でも脱プラスチックに向けた法整備が必要になるだろう。容器・包装に紙、木材、布の活用を増やすほか、海水、淡水、土など自然の中で分解される生分解性プラスチックの製品化と普及に努めたい。