日米首脳会談の安保・外交で肯定的評価の各紙と、真っ向から否定の朝日
◆日米の強い連携確認
27日の南北首脳会談、その後の6月初旬までに予定される米朝首脳会談は朝鮮半島の安定とともに日本の安全保障環境にも直接、大きな影響を及ぼす。その核心は北朝鮮の非核化とあらゆる弾道ミサイルを放棄させることであり、日本にとってはこれらに日本人拉致問題の解決が加わるのである。これらの課題に日本は安倍晋三首相がトランプ米大統領との厚い信頼関係を築き、日米の強い連携で国際社会に働き掛けてきた。制裁による最大限の圧力をかけ続けることで北朝鮮が「非核化」などに政策路線を転換するよう促してきたのである。
米朝首脳会談を前に、日本はこうした「日米同盟」の密な連携と会談に臨む米国の方針を綿密に擦り合わせる必要があった。米朝の進展の中で日本が取り残されるという危惧も一部に出ていたからだ。
トランプ氏の別荘のある米フロリダ州で早朝ゴルフをするなど2日間を共に過ごす中で行われた先の日米首脳会談は、動きが激しい北朝鮮対応などについて多様な展開を協議するなど、改めて日米の強い連携を確認した。今の時期、安倍首相が日本の首相として責任あるリーダーシップを発揮していることの幸いを思わされるのである。
◆対北圧力継続を強調
日米首脳会談についての新聞論調はその評価に際立った違いを示した。
会談の結果を絶賛したのは日経(20日・社説)である。トランプ氏が日米の固い結束と北への最大限の圧力をかけ続けることを言い「安易な妥協はしない姿勢を強調した」ことや日本人拉致問題への協力の約束から「今回の日米首脳会談を、外交・安保の観点からみると、日本にとってほぼ満点といってよい」と高く評価した。
米朝会談の前に「『日米同盟』がいかに行動するかを十分にすり合わせた意義は大きい」とした産経(同・主張)は、さらに「トランプ氏は北朝鮮問題では『自国優先』を唱えず、同盟国である日本の安全保障や日本国民の救出を重視」していることを「首相の働きかけの成果」だと指摘しているが、同感である。
読売(19日・社説)は「北朝鮮が政策を明確に転換し、核とミサイルを廃棄するまで、圧力を維持していく。そのメッセージを日米の首脳が世界に発信した意義は小さくあるまい」。毎日(20日・同)はトランプ氏と「『あらゆる弾道ミサイルの放棄が必要だ-という認識を確認した」「対話は進めても警戒は怠らない。日米の明確なスタンスを世界に示した」と、それぞれ日米連携を基本とする北朝鮮問題への関与を肯定的に捉えている。
こうした一方で、各紙も言及していることだが、小紙(20日・同)は特に「北朝鮮はこれまでは何度も国際合意を破ってきた。その真意を見極めるとともに、米朝対話が北朝鮮の核開発の時間稼ぎに利用されないよう警戒しなければならない」と指摘した。読売も冷徹な目で「国際約束をことごとく破ってきた北朝鮮を相手に、楽観的見方や安易な取引は禁物だ」と、交渉に前のめりになることを戒め、今後の具体的な詰めが重要だと指摘。「国際原子力機関(IAEA)の全面的な査察や、核物質と関連機器の国外搬出などの手続きをどういう順序で進めるか、工程表を練り上げることが大切」だと説くが、極めて妥当な指摘である。
◆「安倍否定」貫く朝日
一方、全く異色な社説を掲げたのは朝日(20日)である。
「友好国も独断で従わせる『米国第一』のトランプ大統領。それでも米国頼みの外交を続ける安倍首相。その現実を痛感させる日米首脳会談だった」と、はなから首脳会談のネガティブ評価を突き付け挑発する調子。「『最大限の圧力』を連呼してきた安倍氏は『大統領の勇気』をたたえたが、対米追随に終始する苦渋の実態を露呈した」「射程の短い弾道ミサイルの懸念をトランプ氏がどこまで理解したかは心もとない」「対米関係と、とりわけトランプ氏との個人的親密さに寄りかかってきたことが、日本の存在感の低下につながっている」などなど、宿敵とする安倍首相に絡んでトランプ氏までケチョンケチョンにクサす。「米国一辺倒が招く試練」をタイトルとする社説は「安保と貿易を絡めた取引を目論む米国に」「日本は新たな外交の試練に直面している」と結ぶ。「安倍否定」をここまで貫徹させるのである、嗚呼(ああ)。
(堀本和博)