安倍首相訪印、連携強化で地域安定に努めよ
安倍晋三首相はきょうからインドを訪問する。
核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮や海洋進出を強化する中国の脅威が高まる中、「アジアの2大民主主義国」である日印両国が連携を強め、地域の安定に努めるべきだ。
中印両軍がにらみ合い
安倍首相の訪印は2015年12月以来で、首脳が交互に相手国を訪れるシャトル外交の一環だ。モディ首相は昨年11月に来日した。
6回目の核実験を強行した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会は、原油・石油製品取引を制限する新たな決議を採択した。日印両国は制裁の厳格な履行を確認し、北朝鮮への国際圧力強化を主導する必要がある。
安倍首相はアジアの大国で自由や民主主義などの価値観を共有するインドとの関係を重視している。モディ首相との首脳会談は今回で10回目となる。両国にとって、北朝鮮問題はもちろんだが、中国の脅威への対処が大きな課題となる。
中印両軍は6月から2カ月以上も、インド、中国、ブータン3カ国が国境を接する「ドクラム(中国名・洞朗)」高地でにらみ合いを続けた。ドクラム高地は中国とブータンが領有権を主張。中国軍が道路建設に着手し、ブータンの後ろ盾のインドがこれを阻止するために軍を展開したものだ。
中国軍は結局、道路建設を中止したが、ドクラム高地はインドの北東部と西部を結ぶ回廊地帯に近いため、中国軍が道路を整備して進出を図れば、インドにとって安全保障上の脅威になりかねなかった。
中国はインド洋でも海洋権益拡大を図っており、パキスタンのグワダル港やスリランカ南部のハンバントタ港などを拠点としている。このような港湾はインドを包囲する形で点在し、「真珠の首飾り」戦略と言われる。日本も尖閣問題などで中国の海洋進出の脅威に直面しており、インドとの連携強化で中国を牽制(けんせい)することが求められる。
安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げている。これは、インド洋と太平洋に面したアジアとアフリカを結ぶ地域の経済成長と安定を目指す構想だ。インド洋の「航行の自由」や「法の支配」を確保するためにも日印両国の協力が欠かせない。
米国、インド両海軍は1992年から海上軍事演習「マラバール」を行っている。日本はこれまで招待国として加わっていたが、今年7月の演習から正式メンバーとなった。
今年は米海軍の原子力空母「ニミッツ」とインド海軍の空母「ビクラマーディティヤ」、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が参加した。首脳会談では、日米印3カ国の防衛協力や共同訓練の推進を確認すべきだ。
経済協力も着実に進めよ
一方、今回の訪印で安倍首相は、日本の新幹線方式が導入されるアーメダバードとムンバイ間の約500㌔を結ぶ高速鉄道建設の起工式に出席する。この路線は2018年に着工し、23年開業を目指す。両国の関係強化に向け、経済協力も着実に進める必要がある。