稲田氏辞任、「実務型」の新防衛相任命を
稲田朋美防衛相が南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報をめぐる問題の責任を取って辞任した。辞任は当然だが、東アジアの厳しい安全保障環境への対応は一刻の猶予も許されない。安倍晋三首相は8月初めの内閣改造で「実務型」の新防衛相を任命すべきだ。
日報問題で信頼失う
稲田氏は日報問題に関する特別防衛監察結果を発表。日報を非公表とする判断について、報告書は稲田氏の関与を認定しなかったが、稲田氏は「国民の信頼を損ね、自衛隊の士気を低下させかねない重大、深刻な問題だ。責任を痛感している」として辞任した。直接の関与がなかったとはいえ、トップとしての責任を取ることはやむを得ない。
稲田氏に関しては、都議選での「防衛省、自衛隊としてもお願いする」との応援演説で、資質を問題視する声が強まった。もっとも、これまでの国会答弁でも物足りなさが感じられたことは確かである。
強引な海洋進出を行う中国や核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮の脅威は高まっている。防衛体制強化は喫緊の課題だ。首相は内閣改造まで岸田文雄外相に防衛相を兼務させるが、内閣改造では防衛政策に精通した「実務型」の人物を防衛相に任命する必要がある。
現在の米国防長官は、元中央軍司令官のマティス氏だ。日米同盟強化のため、マティス氏と渡り合えるくらいの見識が新防衛相には求められよう。そうでなければ、これからも日本や地域の平和と安定を確保していけるのか懸念される。
また、新防衛相は日本の国際貢献の在り方に関する議論を主導できる人物でもなければならない。稲田氏が辞任に追い込まれた南スーダン日報問題は、防衛省が南スーダンPKOの日報を「破棄」を理由に不開示にしたが、実際は存在していたというものだ。昨年7月の日報に「戦闘」の表現があるため、「停戦合意」などを参加条件にした「PKO5原則」が崩れたとの批判を避けるため、隠蔽したとの見方が出ている。
稲田氏は「法的な意味の戦闘行為はない」などと国会で答弁した。だが、こうした議論にとどまっていていいのか。
安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と安定のために尽力するとしている。2015年9月に成立した安全保障関連法は、PKO5原則の武器使用基準を緩和。正当防衛だけでなく、暴徒を排除する場合の警告射撃などを認めた。
これで、離れた場所で襲撃された国連やNGOの職員らを武器を使って守る「駆け付け警護」と、他国軍との「宿営地共同防護」が可能になった。昨年11月には南スーダンへの派遣部隊にこれらの任務を付与したが、治安悪化で実施せずに撤収した。
ハイレベルの貢献進めよ
今のままで日本が国際社会で国力にふさわしい働きができるのか。日本にはより高いレベルでの国際貢献が求められている。揚げ足を取るような野党や一部メディアなどの批判を恐れず、PKO5原則の見直しなど国際貢献策を進められる人物を新たな安全保障のリーダーに起用してもらいたい。