都議会百条委、悪者仕立てより真相の究明を


 東京都議会は豊洲市場(江東区)への移転問題で、百条委員会(調査特別委員会)を設置した。この問題をめぐって参考人招致する予定だった石原慎太郎元知事を、地方自治法に基づく強い権限を持つ百条委で証人喚問することで、さらに厳格な対応になった。

 7月に都議選を控える中だが、問題の解明に冷静な審議を望みたい。

 石原元知事を証人喚問

 老朽化している築地市場(中央区)の移転先となる豊洲をめぐっては、土壌汚染対策の盛り土が行われていなかったことのほか、当初計画より大幅に膨張した建設費、汚染の恐れのある東京ガスの工場跡地を取得したことなどの問題点がある。小池百合子知事は昨年8月、移転を延期した。

 移転を決定した石原氏が喚問されれば、豊洲の用地取得の経緯が焦点になる。もっとも石原氏は昨年10月、小池氏の質問状に東京ガスとの交渉は「部下に任せていた」と回答しており、どこまで具体的な発言を引き出せるかは疑問だ。石原氏は報道陣に、百条委の喚問に応じることと記者会見を開いて自らの見解を明らかにする意向を伝えている。

 豊洲については、専門家会議が2008年、土壌汚染が懸念されるため敷地全体で盛り土を行うよう提言していた。しかし昨年7月の都知事選で勝利した小池氏の知事就任後、盛り土がされていないことが明らかになった。

 小池氏は昨年11月に公表した内部調査報告で、都は09年2月に敷地全体に盛り土をすると決めたが、11年8月に都の担当部局である「中央卸売市場」の部課長会で地下空間を設けることに決めた経緯を公表し、元市場長ら当時の幹部8人の責任を特定した。

 さらに、豊洲の地下水の数次にわたる調査で有害な物質が確認されている。昨年11~12月に行われた9回目の調査では、環境基準の最大79倍のベンゼンが検出されたほか、ヒ素やシアンも基準値を超えていた。前回の調査に比べ数値が急上昇したため、安全性を検証する専門家会議は再調査をして3月以降に報告することになった。

 また、豊洲市場の建設費は2574億円で当初予算の990億円をはるかに上回っている。盛り土がされていなかった上、地下水に基準値を超える有害物質が含まれた敷地に、予算を大幅に超過した建設費を投じることが理に適(かな)わないのはもっともなことだ。

 しかし、石原氏は知事の時に「部下に任せていた」ことから部課長らの細かい交渉まで把握していなかった可能性もある。報告が上がっていたのか否かも関心事だ。

 パフォーマンスは避けよ

 ただ留意すべきは、7月の都議選に向けて、場合によっては石原氏が悪役に仕立てられ、百条委での追及がパフォーマンスになりかねないことだ。

 小池氏を支持する新党「都民ファーストの会」の候補擁立の動きと相まって、全会一致で百条委設置を決めたが、大衆迎合ではなく真相究明に足る内容にすべきだ。