野党再編、有権者の失望を招くだけだ
維新の党の分裂に向けた流れの中、年内の野党再編が模索されている。
しかし、「第三極」を標榜していた日本維新の会とみんなの党の再編派が党を割って結党した維新の党が内紛で再び分裂するという、縮小再生産的な過程を見れば、民主党に復党・吸収され、有権者の失望を招く可能性が高い。
民主と維新が協議機関
民主党の岡田克也代表と維新の党の松野頼久代表は野党再編に向けた協議機関を設置することで合意した。安全保障関連法案に反対する民主党側は、同法案に対案を示した維新の党が分裂状態に陥り、政府・与党への対決姿勢に転じることを歓迎してのことであろう。
既に8月、岩手県知事選に向け、松野代表を含む野党5党首が共同記者会見を行った。さらに、山形市長選で民主・共産・生活・社民の野党4党が推す候補を当時の柿沢未途幹事長が応援。これが、橋下徹大阪市長、松井一郎大阪府知事の維新の党離党と新党結成表明による分裂の流れを決めた。
日本維新の会、みんなの党が躍進したのは民主党・野田政権下で行われた2012年衆院選だった。短期間で政権不信を買った民主党でも、それ以前の自民党でもない第三極という選択肢を有権者に提供して支持を得たものだ。その後、民主党が信頼を回復したとは言い難く、国政選挙も連敗している。
5野党党首結集で注目された岩手では、県議会議員選挙が6日に行われた。自民1増、共産1増、社民1減、生活1減、民主と公明は増減なしだったが、合わせれば自公与党の1増、野党1減の結果で結集に追い風が吹いたとは言い難い。与党が支持を伸ばした一方、共産党が批判票の受け皿になったというのが素直な読み方だろう。
この現状から、今回の野党再編には厳しい批判の目が注がれることは否めない。本来ならば、責任政党として第三極を構築した政治勢力が民主党を巻き込む形で野党再編の起爆剤となり、将来の衆院選で政権の選択肢を有権者に提示しなければならないはずだ。
自民党優位の「一強多弱」の状況下、再編論が浮上する事情もあろう。しかし、投票した政党が次々と変貌するため、新党は不安定で信用できないとの印象を国民に与えている。かつて反自民で結集した野党勢力が連立した細川政権、「寄り合い所帯」である民主党の鳩山・菅・野田政権は、いずれも短命不安定であった。この繰り返しは避けたいところだ。
第三極の原点に返れ
第三極に期待した有権者の支持を回復するには、維新の党が原点に返って、大阪維新の会を核とした「日本維新の会」に生まれ変わることが必要だ。松野代表は結局、柿沢幹事長を解任したが、なぜ松井氏が解任を求めた時に応じて分裂を回避しなかったのか。
松野氏は辞任して混乱の責任を取らなければならない。そして橋下、松井両氏との関係を修復し、さらに次世代の党ともまとまって、票を投じた有権者の期待に応え得る第三極へと再編し直すべきである。
(9月11日付社説)