「天皇の政治利用」に山本太郎議員の処分必要
山本太郎参院議員(無所属)が、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡したことが、「天皇の政治利用」として指弾されている。新人議員とはいえ、「良識の府」たる参議院の議員が、陛下に対しこのような礼を失した非常識な行為に及んだことを看過することはできない。
ルール違反の意識なし
この問題について、参院議院運営委員会は1日の理事会で、山本議員の行為は「国会議員としてあるまじき行為で品位に欠ける」との認識で一致した。ただ処分などについては結論は出ていない。
新藤義孝総務相は「皇室へのマナーとして極めて違和感を覚える」と語った。陛下に直接お目に掛かる機会のある人々が、次々とこのような行為に出た場合、陛下をいかに難しい立場に追いやるかを想像することができないのだろうか。
理事会後、岩城光英委員長の事情聴取に対し、山本議員は、「原発作業員の現状を伝えたかった」と言っている。手紙は東京電力福島第1原発事故に関する内容だった。
山本議員は、今年7月の参院選で「脱原発」を一枚看板に、無所属で出馬し初当選した。原発再稼働反対派の急先鋒(せんぽう)に立って政治活動を展開している。このような自己の政治的主張を伝えるために陛下に手紙を手渡したとすれば、「天皇の政治利用」以外の何ものでもない。
自身の意見は、国会で表明すればいい。そのために議員になったのではないか。このようなスタンドプレーは、「直訴パフォーマンス」と言われても仕方がない。
岩城委員長が「天皇陛下を政治利用したという意識はあるか」とただしたのに対し、山本議員は「政治利用ではない」とし、「手紙を渡すことがルールに反するという意識はなかった」と釈明している。
このような基本的なマナーをわきまえない人物が国会議員となっていること自体が問題であり、資質が問われる。
原発利用についての政治的判断は日本の将来を左右する。まさに国論を二分する難しい、深刻なテーマである。国会議員がこのような政治的争点をめぐる内容の手紙を手渡したことに対して「天皇陛下を国政に引きずり込むようなことにもなりかねない」と谷垣禎一法相が懸念を抱くのも当然だ。
天皇陛下は、天皇家の相続問題という側面を持つ女性宮家問題などでも、国の在り方自体に関わるものであることから、御自身のお考えを表明することを控えてこられた。陛下はここまで、皇室の憲法上の立場を厳格に考えておられる。
それを全く念頭に置かない山本議員の行為は、単なる逸脱ではすまない、自己本位の悪質な行為である。
国会は厳しく対応せよ
参院議院運営委はこの問題について、きょうにも理事会を開き対応を協議する。下村博文文科相は「議員辞職ものだ。まさに政治利用そのものだ」と非難している。
今後、山本議員のような逸脱行為を行う国会議員を出さないためにも、厳しい処分が相当である。
(11月5日付社説)