G7テレビ会議、世界の安定回復に貢献を


 先進7カ国(G7)首脳がテレビ会議を開き、新型コロナウイルスへの対応などについて協議した。

 G7は民主主義、法の支配、人権などの基本的価値を共有している。新型コロナ感染を防ぐために安価なワクチンの普及を進めるとともに、打撃を受けた世界の安定回復に大きく貢献すべきだ。

中国に対する懸念を表明

 G7首脳は会談後に声明を発表。この中で、中国を念頭に「非市場志向の政策や慣行」への対処について協議し、関係国との共同歩調を目指すとの立場を明記した。

 国際社会にとっての最大の懸念材料は、経済、軍事両面で影響力を強める中国の存在だ。知的財産権侵害や国有企業への補助金などで公平な競争を阻害する共産党一党独裁体制の中国に対し、先進民主主義国の枠組みであるG7が厳しい姿勢で臨むのは当然である。

 菅義偉首相は、中国海警船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海侵入などを念頭に、東シナ海や南シナ海における中国の一方的な現状変更の試みに対する懸念を表明。「中国との関係については主張すべきは主張し、中国側の具体的な行動を求めていく」との考え方も示した。中国の覇権主義的な動きに、G7が一致して対処することが重要だ。

 今夏の東京五輪・パラリンピックについて、菅首相は「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として開催する考えを重ねて示し、各国首脳に支持を要請。首脳声明に「日本の決意を支持する」との文言が盛り込まれたことの意義は大きい。

 五輪をめぐっては、大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視と受け取れる発言の責任を取って辞任し、橋本聖子氏が新会長に就任するなど混乱が続いた。新型コロナ感染拡大が続く中、五輪中止を求める意見も強い。菅首相は開催について「G7首脳全員の支持を得ることができた。大変心強い」と語った。五輪の機運向上につなげたい。

 菅首相は新型コロナワクチンに関して「途上国も含め公平なアクセスを確保することが不可欠だ」と述べ、途上国向け供給支援の国際的な枠組みに2億㌦(約210億円)を拠出する日本の貢献策を改めて説明した。ワクチンは「公共財」であり、一部の国が買い占めるようなことがあってはなるまい。

 一方、途上国などでワクチンが入手困難な状況を背景に、中国やロシアなどは自国産ワクチンをてこに国際社会での影響力拡大を図る「ワクチン外交」を展開している。

 しかし、南シナ海の軍事拠点化を進める中国や、ウクライナ南部クリミア半島を併合したロシアのように国際秩序をないがしろにする国が、ワクチンを利用して存在感を高めることは好ましくない。新型コロナ収束後の国際秩序形成はG7が主導すべきだ。

安価なワクチン普及急げ

 首脳声明は世界保健機関(WHO)や産業界と連携してワクチン開発を加速させ、安価で公平な普及を図る方針を示した。スピード感を持って取り組む必要がある。