都知事選告示、複眼的に「首都像」を問おう
東京都知事選挙がきょう告示される。2020年の東京五輪・パラリンピック開催への本格的な準備が進められる一方、首都直下地震や超高齢化への対応など首都・東京の抱える課題は多岐にわたる。都民生活のみならず、全国にも影響を及ぼす首都のリーダーをどう選ぶのか。都民には複眼的な視点で候補者の政策を問うてもらいたい。
単一争点で判断できない
今回の都知事選は、猪瀬直樹前知事が医療グループ「徳洲会」側から5000万円を受け取っていた問題で辞任したことに伴うものだ。それだけに二度と「政治とカネ」にまつわる不祥事で都政を停滞させず、そうした疑念も残さない。それが今選挙の大前提だ。
もう一つの大前提は、シングルイシュー(単一争点)で判断すべきでないということだ。東京は人口約1300万人を擁する巨大都市(メガシティ)で、わが国の国内総生産(GDP)の2割近くを生み出す。経済規模は韓国やメキシコに匹敵し、年間予算は12兆円にも達する。さまざまな課題を抱えているにもかかわらず、「脱原発」などを単一争点化させれば首都像はいびつになろう。
「世界の中の東京」も念頭に置くべきだ。世界では6割の人が都市に住み、人口1000万以上の巨大都市は27あるが、いずれもインフラの不足や老朽化、住民の高齢化などに直面している。ロンドンでは五輪会場跡地の再開発が注目されているが、東京も五輪に向け、こうした難問を解決する新たな都市像の提示を期待されている。
新知事はそのトップリーダーで、「東京の魅力」を世界に発信する責務を担う。五輪で使用する37会場のうち22会場が新たに建設されるが、都は14年度から5競技場の基本設計に着手し、選手村(中央区)の建設予定地の整備も始める予定だ。
開催準備には国との連携も課題となる。五輪のシンボルとなる新国立競技場は国と都が費用を分担するほか、国はインフラ整備へ圏央道や外環道、首都高などの環状道路の工期短縮を目指し、ボランティアの育成にも乗り出す。国と強固な協力体制を築くのは新知事の使命だ。
こうした五輪関連事業は首都直下地震などに備える防災対策と併せて取り組む必要がある。首都直下地震では死者が最悪のケースで約2万3000人とされ、強靭な防災都市づくりは喫緊の課題だ。首都機能が失われ、国家がマヒする事態を招いてはならない。倒壊や火災被害が甚大になるとみられる木造密集地域の耐震化も急がれる。新知事にはリーダーシップが必須だ。
また東京は超高齢化問題も抱える。現在、都内の高齢者は全国最多の約270万人で、このうち1人暮らしは約62万人に上るが、20年には321万人、1人暮らしは84万人に達する見通しだ。高齢者は災害弱者でもある。地域の支え合いをどう編み直すか、新知事にはきめ細かな福祉施策が求められる。
都民は練られた一票を
こうした多岐にわたる課題を見据え、複眼的な視点で候補者の政策を吟味する。2月9日の投票日にはその練られた一票を投じてほしい。
(1月24日付社説)