地方創生新戦略 一極集中是正に抜本的対策を
東京圏への一極集中の是正が進まない。政府は昨年末に、今後5年の地方創生の具体策を盛り込んだ「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改定案を決めた。2014年策定の第1期戦略で20年までに東京圏の人口の出入りを均衡させるとしたが、達成が困難となったため、この目標を24年まで据え置くこととなった。
明治以来の大きな流れ
東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への一極集中の是正は、地方創生の大きな柱である。少子高齢化が加速し、人口減少に歯止めがかからない日本の地方創生の重要指標となっている。
一極集中は、人口減少や出生率の低下に直結している。昨年、国内で誕生した日本人の子供の数は86万4000人で、統計開始以来、初めて90万人を割り込む見通しとなった。前年の91万8400人から約5万4000人の大幅減で、4年連続で過去最少を更新した。
確定数が出ている18年、1人の女性が生涯に産む子供の数に当たる合計特殊出生率は1・42だったが、都道府県別に見ると東京都は1・20と全国平均を大きく下回る。神奈川県も1・3台だった。
地方における人口減の大きな理由の一つは、出産適齢期の女性が都市圏へ出て行って少なくなったことである。子育て環境は、都市部より恵まれているのに、大学進学や就職で東京圏などに住むようになり、そのまま結婚し東京圏で生活し続けるため、地方では子供を産む女性が減っているのだ。
第1期戦略では20年までに東京圏の人口の出入りを均衡させると明記した。しかし、18年は逆に13万6000人の「転入超過」となった。転入者は14年比で2万6000人も増え、東京圏への人口集中は是正されるどころかむしろ進んでいる。
こういう現状であるにもかかわらず、改定案には抜本的対策は見られず、24年までにこの目標が達成されるか疑問だ。
新たな戦略では、兼業・副業などで地域と関わる「関係人口」の増加を目指す。生活の拠点を都市部に置きつつ、週末だけ地方で農作業をするなど新しい生活スタイルを推奨するという。地方と都市部との交流が活発となる可能性はあるが、これで地方の人口減に歯止めがかかるとは思えない。
東京圏への一極集中や、大地震などの発生に備えての政府機能や首都機能の移転は、官僚たちの抵抗や東京都の消極的な姿勢で、ほんのおためごかしに終わってしまった。人口減少がもたらすもの、大規模災害への危機意識の欠如は明らかである。
一極集中是正のためのもっと抜本的な構想を政府は打ち出すべきである。一極集中は明治以来の大きな流れであり、変えるのはもちろん容易ではない。しかし、少子高齢化、人口減の波は容赦なく押し寄せている。
価値観や生き方の検証も
大きな流れを変えるには、思い切った施策が必要だ。日本人の価値観、生き方にまで検証を深めるためにも、見識を持った思想家らの意見も入れて、国家百年の計として戦略を立て直すべきである。