自主防衛能力を向上させよ
攻撃能力は米軍に依存
集団的自衛権に伴う議論を
第2次安倍内閣の組閣に当たり、安倍総理と石破幹事長との間に、安全保障の基本理念の再検討と集団的自衛権行使容認に必要な法律の制定との優先度について意見の相違があった。
8月、ラジオ放送番組での石破幹事長の爆弾発言は、政局の混乱を招きかねないとの報道もあった。しかし、石破氏の入閣受諾により安倍内閣改造後の政局は一応安定した。
政府は昨年12月17日、内容も充実した「国家安全保障戦略」を閣議決定した。従来は、昭和27年決定された「国防の基本方針」があったが、その実態は、僅かに4カ条であり、しかも、日本の防衛構想については「第4条 外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに到るまでは、米国との安全保障体制を基調として対処する」とし、具体的構想は皆無であった。また、政治は世界平和を願望はしても、集団安全保障に関する行動などは消極的で、いわゆる「一国平和主義」であった。政府は過去を反省し、積極的平和主義を目指している。
8月6日、「産経紙」など中央3紙は、日本国際フォーラム第37政策提言「積極的平和主義と日本の針路」を1ページ全面広告として掲載した。その要旨は次のとおりである。
前文として、「東西冷戦は、西側民主主義国の勝利で終り、その後は一極支配から多極支配を経て、無極支配と呼ばれる段階に変化しつつ、今なお、バランス・オブ・パワーの地点に到達せず、混迷の度を深めている」と、憂慮している。続いて、序論として、下記6項目について適切に説明し、結論を提示している。
序論
①混迷の度を深める冷戦後の国際秩序
②集団的自衛権の行使に満足するなかれ
③「一国平和主義」から「世界平和主義」へ転換せよ
④クリミヤ問題への対処ぶりこそが積極的平和主義の試金石となる
⑤国際社会は中国に誤ったシグナルを送ってはならない
⑥積極的平和主義と日本の針路
結論
1、国連の集団安全保障措置には軍事的措置を伴うものを含めて、参加せよ
2、PKO法の所要の改正および国際平和協力基本法の制定を早急に実現し、もって世界的な集団安全保障体制の整備に貢献せよ
3、集団的自衛権の行使容認を歓迎し、必要な法制度の早急な整備を求める
4、日米の対中戦略協調を前提としつつ、東南アジア、豪州、インドとの連携も強化せよ
5、G7諸国とともに、ロシアの「力による一方的領土拡大」を拒否し、その不承認政策を貫徹せよ
6、日本は「地球規模の諸問題」についてもリーダーシップを発揮せよ
結論はいずれも妥当で、既に実行されつつあるものもある。しかし、この提言の達成には、日本の平和と安定の確保が必要である。日本は敗戦後約70年もの長期間、平和の恩恵に浴し得たのは、精強な自衛隊と緊密な日米同盟による抑止力によるものである。敗戦後の日本は「吉田ドクトリン」に惑わされ、「平和憲法」を盾にし、独立国としてあるべき自主的防衛(自力単独防衛ではない)意識が低下し、自助努力不足で、その結果、米国の支援を過大に期待してはいないだろうか。
本欄で6月、[日米同盟を深める後方支援]と題し、「米軍の支援なくしては、日本の防衛は成立しない。『戦争に巻き込まれ』を恐れるよりも『米国巻き込み』を重視し、日米同盟を強化すべし」と述べた。集団的自衛権行使容認により、周辺事態悪化における米軍に対する後方支援も強化され、「日米防衛協力ガイドライン」も充実し、改正されよう。このための協議を好機として、外国の航空攻撃に対し、即応して反撃可能な態勢について検討されることを提言する。
そのために、政府は、専守防衛政策について再検討しておく必要がある。F4戦闘機装備に当たって、野党の同機装備の爆撃装置及び給油装置は専守防衛に反するとの意見により撤去せざるを得なかった苦い経験もある。今後、誘導弾、航空機の性能向上、特に攻撃機のステルス性の強化により、防空はますます困難になる。
今年の防衛ハンドブックは、「専守防衛は防衛用語としてわが国の防衛の姿勢、特徴を示す言葉として次第に定着してきている」と述べている。しかし、続いて「防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃するような戦略的攻撃は取れない」と述べている。過去には、誘導弾基地等として、航空機基地も攻撃可能と解釈される記述であった。しかし、前述のF4戦闘機においては否定された。専守防衛の意義は曖昧である。
そのため自衛隊は空からの脅威に対し、反攻のための航空基地に対する攻撃も禁じている。その結果、攻撃能力は米軍に依存しており、その即応した反攻がなければ、日本本土を含め周辺海域の航空優勢を確保できず、日本の被害は莫大となろう。国民は、専守防衛の結果がこのような実態を招くだろうことを理解しているだろうか。
日本も、独立国として最小限の敵航空基地攻撃能力は保持すべきである。その実現までは、それを米空軍に期待するほかはなく、その支援には万全を期すべきである。
(たけだ・ごろう)






