次の災害に備え相互支援協定を
エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
地域超え「共助」取り決め
学校・企業などからNGOまで
新型コロナウイルスは、社会がいかに相互依存しているかを示しているが、コロナ以前でもそうであった。
過去のさまざまな災害で、個人や組織、地方自治体や国が互いに助け合った。災害救援は、生と死、あるいは希望と絶望の差を生むほどの大きな差を生む。タイムリーな支援ができるかどうかが、家族、コミュニティー、ビジネス、協会などを再構築できるかどうかの分かれ目になる。
毎年の見直し・更新を
このため、およそ2年前の2018年6月、大阪府箕面市にある子供らのインターナショナルスクールのすぐ近くが震源地だった大阪北部地震後、筆者は日本にある国際学校が今後、被災した場合、他のインターナショナルスクールがその学校を支援できるようにする相互支援協定の締結を提案した。震災発生後、慌てて支援に乗り出すのではなく、どのように支援できるのか、あるいは、自らが被災した場合、どのような支援が期待できるのか、といった枠組みをあらかじめ作るべきだと考えている。
結局、親であり、災害対応の専門家として筆者は、「自然災害と緊急事態における相互支援コミットメント」という文書を起草した。将来を見据えた学校関係者の助けもあり、その後、関連する国際学校協会によって採用された。
この「協定」は自発的なものであり、被害を受けていない学校の支援能力次第であるが、個人の経験から、これらの学校に所属する多くの思いやりのある教育者、管理者、保護者、生徒たちが助けたいという気持ちを持っていると確信している。
重要なのは、このコミットメントは毎年見直され、新しい体験、要件、およびスキルセットによって必要に応じて更新されることだ。
私の希望は、協定はここで終わるのではなく、他の協会や組織、業界も地域を超えて「共助」との原則を使用することだ。
同様の組織は、相手のニーズをかなり分かっているので、お互いを支援する大きな利点がある。例えば、規模の大きい業界の類似のビジネスは、製品、市場、サプライチェーン、流通、会計年度の流れ、必要なトレーニングなどに精通しているので、お互いを助けることができる。他の分野でも同じことが言える。これらの共同の取り組みは、業界団体や企業団体、または関連するNGOや地方自治体によって促進することもできる。
例えば、学校なら、提供するサービスや、利用する建物や設備に基づいて、お互いに助け合う方法はたくさんある。被害を受けていない学校がコミットできる数ある項目のうち、九つの項目を提案した。
①寄付集め②本、服、物資、消耗品などの寄贈③ボランティア活動④教員、職員、カウンセラーの派遣⑤オンラインによるサービスの提供(授業、カウンセリング、放課後の指導、高学年の生徒によるチューターなど)⑥使用していない学校のスペース(教室、体育館など)の提供⑦教材、楽器、スポーツ道具の貸し出し⑧避難場所やホームステイの提供⑨その他―。
学校、企業、高齢者施設、特別支援施設、病院、診療所、NPOやNGOなどの組織や団体は、東京直下の地震、南海トラフ地震と津波、東海地震と津波、富士山噴火、5000人の犠牲者を出した1959年9月の伊勢湾台風のようなスーパー台風など、将来の災害が発生する前に、「相互支援協定」の起草と締結などで行動すべきだ。希望する読者に上記の見本を喜んで提供したい。
「防災の日」を出発点に
残念ながら、今日の災害は違っている。ますます複雑になっている。
例えば、日本で豪雨による水害は一層破壊的なものになっている。これに加えて、新型コロナは、医療体制に大きな負担を与えているのみならず、感染の潜在的なリスクのために災害ボランティアを集めるには重大な支障になっているのは事実だ。避難所もまた、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の必要性のために新たな制限に直面している。
この複雑な状況は、組織が助け合い、相互依存を示すために事前に取り決めを行う必要性を見せている。「防災の日」である今日から新しいコミットメントの出発点として活用しよう。