【社説】こども家庭庁 左翼理念排除し家庭支えよ


家庭

 子供政策の司令塔となる新組織が「こども家庭庁」として2023年度に創設されることが決まった。これまでは「こども庁」という名称が想定されていた。

課題への一元的取り組み

 未来を担う子供に関する問題は、課題への直接的な対応とともに、子育ての基盤となる家庭への支援が重要だ。この意味から、名称に「家庭」が入ったことは歓迎できる。ただ、子供を「権利行使の主体」と捉える左翼的な理念で創設が検討されてきた経緯がある。名称だけでなく、肝心の視点が子供の権利に偏ることなく、家庭基盤の充実を図る方向に修正されるか、注視しなければならない。

 わが国は現在、少子化、児童虐待、不登校、自殺、貧困・教育格差などの問題が噴出し、年々悪化している。児童虐待一つとってみても、全国の児童相談所が昨年度に対応した虐待相談件数は20万件を超え、30年連続で最多を更新する事態となっている。こうした問題の解決については、国民の関心が高く、政治の重要課題である。

 現在、子供に関する行政は、幼稚園が文部科学省、保育園・障害児支援が厚生労働省、子育て支援は内閣府など所管が複雑に分かれている。新組織は教育と福祉だけでなく医療も含め、子供に関連するあらゆる課題について、一元的に取り組めるようにするのが狙いだ。具体的には、厚労省の子ども家庭局、内閣府の子ども・子育て本部など、これまで子供政策を担ってきた部局を統合。200人を上回る規模を目指すという。

 省庁の縦割りを打破し、政府を挙げて課題に取り組むことは時代の要請だが、懸念されるのは基本理念だ。自民党で新組織創設を牽引(けんいん)してきたのは、山田太郎、自見英子両参議院議員。2人は共同事務所を設立し、今年2月には「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」を発足させた。

 勉強会は新組織の名称を「こども庁」とし「家庭」を外していた。5月にまとめた第2次提言は、基本的な考え方として「子どもを一人の人間として尊重する、子どもの権利を基盤とした社会」の実現を謳っている。

 さらには「子どもの環境改善にかかわる問題」として「包括的性教育の不足により予期せぬ妊娠、人工妊娠中絶、妊娠適齢期の周知不足の問題。避妊法や人工妊娠中絶へのアクセスの悪さ」を挙げている。

 子供を尊重するのは当然だ。だが「権利行使の主体」と捉えているとすれば、家庭の解体をもくろむ左翼思想の影響を受けているとみて間違いない。子供が権利の主体となれば、叱ってしつけることもできなくなる。それでは自制心を身に付けた若者は育たず、いじめの増加を招くことになろう。ましてや、早くから避妊法を教えるような過激な性教育の推進役となってはならない。

健全な成長への施策を

 子供の健全な成長は、家庭や地域社会と密接に関わる。新組織が課題への対処療法に終わるのではなく、子育ての基盤である家庭を支援し、その機能が発揮できるよう、抜本的かつ長期的な視野に立った施策を進めることが肝要である。