【社説】衆院選投開票 政策吟味し最良の選択を
令和の国づくりをどの政党に託すのか。第49回衆院選がきょう投開票される。初挑戦となった岸田文雄首相に対する信任や日本共産党と史上初めて政権合意した立憲民主党への評価などが問われる。論戦は重要問題で深められず低調だったが、有権者は各党が主張してきた政策を一つ一つ吟味し、最良の選択をしてほしい。
「未来」を大きく左右
今回の選挙は、新型コロナウイルス禍の中で行われたため、候補者の訴えでその対応策の比重が高まったのは当然だ。自民党は「行政がより強い権限を持つための法改正の実現」、日本維新の会は「実行力のある要請・命令が行える法整備」を主張。一方の立憲は「首相直轄の司令塔組織の創設」を訴えた。
ただ、もっと議論を深めてほしかったのは、コロナ禍だからこその危機管理と憲法との関わりだった。17日間とはいえ、選挙のため衆院議員が存在しない状況が続いた。仮にこの間、コロナの急速な再拡大や、新たなウイルスあるいは巨大地震などが生じた場合、誰がそれに対処したのか。衆院議員の任期を4年と定めた憲法45条の改正が喫緊の問題として浮上してよかったはずだ。
17日から23日にかけて、わが国は安全保障上、極めて深刻視すべき事態に直面した。中国とロシアの海軍艦艇5隻ずつ計10隻が津軽海峡から大隅海峡を通過し、日本列島をほぼ1周したのである。中露が隊列を組んで大隅海峡を通過したのは初めてとみられている。
両国海軍が艦載ヘリコプターを発着艦させた伊豆諸島周辺では、航空自衛隊が戦闘機を緊急発進(スクランブル)させた。沖縄県・尖閣諸島周辺防衛の必要性を各党は主張するが、防衛地域の拡大という事態に直面しているのだ。北朝鮮による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射への危機意識も低かった。
こうした問題に対処するため緊急事態条項の盛り込みなど憲法改正論議が高まってよかったろう。岸田首相は今回の総選挙を「未来選択選挙」と命名したが、国家・国民の安全と生命の保障のない「未来」はないのである。
「未来」を考える上で、自民と他党とで大きな違いの出たテーマが選択的夫婦別姓や同性婚の是非だ。岸田首相は導入に慎重な姿勢を示し、さらなる議論の必要性を主張した。これに対して与党の公明も含めた他党は、導入推進の立場だ。
しかし、導入の先にある「未来」には、家族の絆の弱体化があり、社会体制を大きく変え国力を衰退させるという問題が控えている。自由や多様性は尊重すべきだが、このテーマには適用すべきでない言葉である。「家族重視」か「個人単位志向」かも選択肢となろう。
このほか、台湾への対処、北朝鮮による邦人拉致問題、エネルギー戦略、社会保障問題なども有権者自らが比較し熟慮すべきテーマとなる。
若者層は自覚を持とう
懸念されるのが投票率だ。特に18歳から19歳の若者層は低下傾向にある。国づくりの主役の一人であるとの自覚を持って投票所に向かってもらいたい。