敬老の日 健康寿命延ばし豊かな老年を
きょうは「敬老の日」。100歳以上の高齢者が8万人を超す長寿社会となった日本だが、少子高齢化によるさまざまな課題も浮き彫りとなっている。敬老の精神を改めて思い起こすとともに、豊かな老後のため何が重要かを考える日としたい。
高齢化率は3割近く
総務省の推計によると、65歳以上の人口は3640万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29・1%とどちらも過去最高を記録した。高齢化率は世界最高で、2位のイタリア(23・6%)を大きく引き離している。
少子高齢化、生産人口の減少が進む中、政府は高齢者医療や福祉に充てられていた予算を、今後生まれてくる世代へもっと回す方向で社会保障改革を進めている。経済的に余裕のある高齢者よりも未来を担う世代に税金を使う方が合理的である。
しかし、高齢者も財産や所得、家族構成など境遇はさまざまだ。不安なく暮らせる最低限の社会保障の網の目をいかに築くか。全ての高齢者が安心した生活を送り、尊厳を失わずに生を全うすることができる制度を確立する必要がある。
生産人口の減少は、高齢者の就労促進で補っていくべきだ。総務省推計では、高齢者の就業率は25・1%で4人に1人が仕事をしている。日本人には欧米などに比べ、老後も完全に引退生活を送るよりは少しでも働くことを望む人が多い。
政府は「生涯現役社会」を掲げており、この傾向は進むものとみられる。高齢の労働者は、これまで培ってきたスキルや知識、さまざまな経験がある。高齢者と若い世代のコラボレーション(協働)によって活力と創造性が生まれるようにしたい。
もちろん、老後をどう過ごすか、家族や社会との関わり方は人によってさまざまである。孫の面倒を見るのも未来に繋(つな)がる尊く素晴らしいことだし、趣味や旅行は人生を豊かにするだけでなく、消費を通して富を社会へ還流する行為となる。
ただ老後の在り方がどのようであっても、重要なのは健康であることだ。世界保健機関(WHO)は2000年に「健康寿命」という概念を提起した。「健康上のトラブルによって日常生活が制限されずに暮らせる期間」のことだが、これを失った場合、どんなに家族や社会のために何かをしたいという気持ちがあっても実行することができない。健康寿命の増進がよりよい老後の鍵である。
もちろん、老化は自然の流れであり、寿命もいつかは尽きる。それでも少しでも長く家族や社会のために生き、また自分の趣味や生活を楽しみたい。そのために、日頃から生活習慣病への配慮、ウオーキングなど健康維持のための努力を積み重ねることが重要だ。
コロナ感染に注意を
75歳以上の後期高齢者でも、心身共に健康で元気な人は少なくない。ただ新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で、高齢者が感染症との戦いにおいて極めて大きなリスクを抱えていることを痛感させられた。
それだけにアンチエイジングを過信することなく、これまで以上に健康維持への注意が求められる。