パラリンピック 安全に万全期し勇気もらおう


 東京五輪と同じく1年間の延長を経て、きょう東京パラリンピックが開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言下での開催となったが、安全に万全を期して選手たちの最高のパフォーマンスの舞台としたい。そして世界の人々が勇気をもらい、調和と共生の世界へと進む歴史的大会となることを期待したい。

選手約4500人が参加

お台場海浜公園の海上に設置されている、パラリンピックの巨大シンボルマーク「スリーアギトス」=23日午後、東京都港区

 今大会は世界161の国・地域から史上最多となる4500人規模の選手が参加し、22競技539種目でメダルを争う。人間社会の調和と共生のために果たしてきたパラリンピックの意義はますます高まっている。今回はコロナ禍でも障害を持つ人が世界から集い、競い合う歴史的大会となる。

 大会組織委員会は、コロナ対策を最優先として準備を進めてきた。開幕直前には国内大会関係者への検査頻度引き上げが発表された。4日に1度の検査が求められていた関係者は毎日、7日に1度だった関係者は4日に1度に改められた。

 国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は「五輪によって感染対策の指針『プレーブック』が効果的であることも分かった。油断することなく、すべての選手、関係者がこの指針を順守する」と対策に万全を期す決意を語った。パラ選手には気管支などに基礎疾患のある人もおり、感染リスクは健常者より高い。五輪以上に細心の注意を払う必要がある。

 組織委の橋本聖子会長は「選手関係者をコロナから守り抜く。これを第一として大会を成功させたい。その上で多様性と調和を目指す社会へ変革をもたらしたい」と述べた。感染抑制が大会成功の鍵との認識で最後まで務めてほしい。

 障害を抱えながら練習してきた選手たちのパフォーマンスには、健常者にはなかなか分からない苦労と努力が背景にある。パラスポーツに対する理解を、テレビでの大会観戦を通し、さらに深めたい。

 困難と障害を越えて輝く選手たちから、五輪に勝るとも劣らない感動、勇気をもらえることを期待したい。そして純粋にスポーツを楽しむという点で、健常者も障害者も変わらないことを感じ取っていきたい。

 選手たちを支えてきた家族や関係者にとっても、1年の延長期間も含めたこれまでの集大成の場である。選手と共に感動を分かち合ってほしい。

 今大会はアフリカの49の国と地域で初めてパラリンピックが放送され、過去最多となる42億人余りがテレビ観戦するもようだ。パーソンズ会長は「社会に取り残された障害者を中心に据え、その声を世界に発信できる大会だ。ぜひテレビ観戦して楽しんでほしい」と述べている。

教育上も貴重な機会

 児童・生徒に観戦機会を提供する「学校連携観戦プログラム」では、都内の約14万人の生徒が観戦する予定だ。小池百合子知事は「学校設置者と連携して検査態勢の調整など安全対策の強化を進めている」と強調している。子供たちがパラリンピックを観戦するのは、教育上も貴重な機会だ。安全対策をさらに詰めて希望に応えてほしい。