東京五輪開幕 「スポーツの力」で希望の灯を
「スポーツの力」で、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)に苦しむ世界に希望の灯をともしたい。スポーツにはその力がある。
「コロナ克服」の意義も
きょういよいよ開幕する東京五輪は、緊急事態宣言下、無観客という五輪史上異例の開催となる。しかし「平和の祭典」そして東日本大震災からの「復興五輪」としての意義は変わらない。それに加えて「人類が新型コロナウイルスを克服した証し」という、さらに世界的な意義が加わった。何としても成功させなければならない。
大会には200以上の国・地域から約1万1000人の選手が参加し、17日間にわたって熱戦が展開される。大会を歴史的なものにできるかは、国民がどれだけその意義を理解し、心を一つにするかに懸かっている。
IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と会見した天皇陛下は、IOCの尽力に敬意を表されて「アスリートの皆さんが健康な状態で安心して競技に打ち込み、その姿を通じて、新しい未来へと希望の灯火がつながれる大会となることを願います」と語られた。
開会式に先立って、ソフトボールや男女のサッカーなどの試合が始まっている。新型コロナ蔓延下で練習と研鑽(けんさん)を積んできた選手たちの溌溂(はつらつ)とした懸命のプレーは、勝敗を超えて感動と勇気を与えてくれる。精神的にも肉体的にもコロナに負けない姿は、人間本来の健康な姿を確認させてくれる。
そういう意味でも、今回の五輪ほど「スポーツの力」の発信が求められている大会はないと言える。菅義偉首相は「世界の選手の活躍によって、若者や子供たちに夢や感動を与えられる最高の機会になることを期待している」と述べている。
不祥事や不適切な言動による大会関係者の相次ぐ辞任は残念なことだ。しかし、それによって、参加したアスリートのパフォーマンスそのものの価値が下がるわけではない。
さまざまな制約がある中、「安心安全」な環境で、少しでも快適に練習、試合に集中できるようにすることができるかが、大会の成否を占う試金石となる。とりわけ選手村での感染対策には細心の注意を払っていきたい。そして、ホスト国として「おもてなし」の心でサポートしていくことを忘れたくない。
海外からの観客受け入れを断念し、さらに無観客開催となって、日本文化の発信など五輪に期待されたさまざまな目標はかすみがちだ。しかし、震災被害を受けた福島県でソフトボールの試合が行われ、宮城県では村井嘉浩知事の英断によって有観客でサッカーの試合が行われる。復興した元気な東北を世界に発信していきたい。
オンラインで応援を
新型コロナの陽性者数が拡大していることに警戒を呼び掛けた菅首相は、五輪について「国民の皆さまには、家族一緒に家庭からテレビで応援してほしい」と述べている。制約の多い中でも、オンラインでの応援メッセージなどを駆使すれば、その心は伝わる。選手たちの健闘とともに、こうした新しい応援の在り方が東京五輪を歴史に残る大会とするだろう。